法律

労働市場の流動性とブラック企業

2016年5月16日付の日経新聞朝刊、「経済教室」に慶應義塾大学の山本勲先生が「総労働時間の上限規制を」という題で書かれています。 この中で「日本には違法に長時間労働を強いる『ブラック企業』」が存在するといわれる。本来であれば、そうした企業…

技能実習

今日(2015年3月10日)の日経新聞に「技能実習制度」の解説があります。 技能実習制度 国際協力の一環として、新興国などの人材を国内に受け入れたうえで、企業などで一定期間働くことで、専門的な技術や知識を習得してもらう制度。1993年から始まっ…

「民法第772条 改正案 その7 (その5の訂正)」の修正

「民法第772条 改正案 その7 (その5の訂正)」で、当時の東京高裁判決をもとに、次のように書きました。 嫡出の推定が排除されるのは、今のところ次の二つの場合であるようです。 1 妻が懐胎した当時において、夫が長期不在(その原因としては、服役…

スウェーデンの雇用保護法

スウェーデンの雇用保護法の一部の仮訳です。 使用者による雇用終了の通告 第7条 第1項 使用者による雇用終了の通告は客観的な基礎に基づかなければならない。 第2項 使用者に対してその事業において他の仕事を被用者に提供すること要求することが合理的…

企業の閉鎖の場合には解雇を認めるべきか?

「整理解雇は禁止されるべきである」では、次のような問題を取り扱いました。 通常の生産関数を前提として、労働の限界生産性×生産物の価格=名目賃金という条件、企業の利潤最大化の条件を満たす労働者数をN人とする。企業が当初、この条件に合うようにN人…

整理解雇の金銭解決も強制されるべきではない

解雇の金銭解決、つまり、国の決めた金銭を支払えば、解雇ができるようにするというシステムは、妥当な社会的ルールだろうか?「整理解雇は禁止されるべきである」で書いた整理解雇の場合について考えてみたい。 具体的なルールがまだ提案されていないので議…

整理解雇は禁止されるべきである

「法律ではそうなっているかもしれないけれど」で、英米法や大陸法の歴史に絡めて解雇権乱用法理の話をしましたが、hamachanの「ジョブレス解雇に一番必要な規制はなにか?」によると「EUでは全加盟国に整理解雇時の労使協議を義務づけているのですし、国…

法律ではそうなっているかもしれないけれど

「混乱の本当の原因」で取り上げた権利の乱用に関連して。 「法律ではそうかもしれないけれど」、「契約上はそうかもしれないけれど」、「いくらなんでも、それはないんじゃないか?」という問題は多々ある。法律が社会の良識と完全に一致するような結果をも…

「有期契約法制の改正」について

「有期契約法制の改正」にがちもさんから次のようなコメントを頂きました。まだこの改正についてはわからないことが多いのですが、とりあえず、お返事を。 「自分も、転換後の期間の定めのない契約について労働条件を当事者で定めることができるとした規定は…

有期契約法制の改正

日経新聞のこの記事の最後で引っ掛かりました。 改正労働契約法、勤続5年で無期限雇用 パート待遇改善へ道 2012/8/3 23:37 同じ職場で5年を超えて働いているパートや契約社員を対象に、本人が希望すれば無期限の雇用への切り替えを企業に義務づける改正労…

混乱の本当の原因

「WEDGE大竹論文の問題点」で hamachanさんがこう書かれています。長いのですが引用します。 労働経済学者は往々にして、意識的にか無意識的にか、この両者(平家注 解雇権濫用法理と整理解雇4要件)をごっちゃにした議論をしたがるんですね。大竹先生だけ…

筋を通そう

保守親父@労務さんが 「国家公務員の所定労働時間、15分短縮」でこんなことを書かれています。 1日あたり15分の所定労働時間短縮は大きいですねぇ。これは時間あたり賃金で単純計算すれば約3.2%のベアに相当します。もし、短縮された15分にも割増賃金を支…

雑感、不安感

この記事はhamachanさんの「鈴鹿国際大学事件」のパクリです。全文を引いているわけではないので、元のエントリとそこに引かれている最高裁の判決もお読みになることをお勧めします。 地裁では原告勝訴、高裁では被告勝訴と判断が分かれましたが、最高裁は再…

「派遣労働者 男と女」について

「派遣労働者 男と女」について、濱口先生が、誤解がある旨のエントリーを書かれています(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_1fc7.html)。トラックバックになっていないので、ここでご紹介しておきます。 以下、引用です。 常用型派…

派遣労働者 男と女

「派遣労働者の職種」では、男女合計で職種分布を説明しました。 しかし、派遣労働の職種には男女で大きな差が存在します。 こんな、分布です。データの出所は、前回同様、厚生労働省の平成15年の就業形態の多様化に関する総合実態調査報告書の第3表です…

派遣労働者の職種

「「派遣労働者、請負労働者の使用者」について」で、「派遣労働者が常用であるか、登録であるか、事前面接があるかどうか、派遣期間がどれくらいであるかといったことは誰が使用者であるかということには影響」しないような法制を提案しました。 濱口先生は…

「派遣労働者、請負労働者の使用者」について

「派遣労働者、請負労働者の使用者」に、濱口先生から、またまた、丁寧なご回答をいただきました。「「平家さんへの再々答弁」」というエントリーです。以下引用はこの濱口先生のエントリーからです。 私はこう書きました。 派遣業も労務供給業も使用者業務…

派遣労働者、請負労働者の使用者

「「派遣労働者は直接雇用のプールだろうか?」について」に、濱口先生から、再び、丁寧なご回答をいただきました。「「平家さんへの再答弁」」というエントリーです。以下引用はこの濱口先生のエントリーからです。 「事前面接の有無で事後的に使用者責任の…

「派遣労働者は直接雇用のプールだろうか?」について

「派遣労働者は直接雇用のプールだろうか?」に濱口先生から丁寧な回答(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/post_bc79.html)をいただきました。ご主張が理解できました。感謝します。 僭越ながら、他の方にも参考となるだろうと思うので、…

派遣労働者は直接雇用のプールだろうか?

濱口桂一郎先生が論説「労働ビッグバンを解読する(http://homepage3.nifty.com/hamachan/bigbang.html)」で、派遣労働者の事前面接についてこのような主張をされている。 常識に適っていないのは、適性を確認してミスマッチやトラブルを避けたいと考えるよ…

夏至と冬至

国民の祝日に関する法律という法律があります。こんな簡単な内容です。 第一条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日を定め、こ…

民法第772条 様々なケース その3

「民法第772条 様々なケース その2」での予告通り、離婚後、再婚のケースを取り上げます。 夫と離婚し、再婚しない、再婚を拒否された場合、夫と離婚し、再婚した場合に現れる組み合わせは、婚姻の解消の理由が離婚に変わるだけです。ただ、死後の人工授…

民法第772条 様々なケース その2

「民法第772条 様々なケース その1 」で予告したとおり、今回は、死別後再婚のケースを取り上げます。 今回はケースが多く、18通りあります。しかし、本質的に新しいケースは輪それほど多くありません。 Ⅱ 夫と死別し、再婚した場合 解消の理由婚姻中…

民法第772条 様々なケース その1

以前、「民法第772条 改正案 その3」などを書いたのですが、民法772条問題が、依然として議論されています。議論のされ方に、かなり違和感を感じています。 (参考) 民法第772条 1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 2 婚姻の成立…

民法第772条 改正案 その7 (その5の訂正)

「民法第772条 改正案 その5 親子関係不存在」に、 誤りがありました。 謹んで訂正いたします。 「婚姻中又は離婚後300日以内に生まれた子供は,婚姻中の夫婦間にできた子(嫡出子)と推定され,仮に他の男性との間に生まれた子供であっても出生届を…

民法第772条 改正案 その6

「民法第772条 改正案 その5 親子関係不存在」で書いたように「推定が及ばない子」に就いてだけ、親子関係不存在の訴えを認めた論理は多分こういうことではないかと、想像します。 Ⅰ 元々、民法の規定というのは、離婚を前提にすると、こういうことなの…

民法第772条 改正案 その5 親子関係不存在

「民法第772条 改正案 その4」に関連して。親子関係不存在の訴えについて補足を。 民法第772条第2項の推定を破るのは、普通の推定を破るのに比べて困難です。父だけができる嫡出否認の訴えと子供,父母,親子関係について直接身分上利害関係を有する…

民法第772条 改正案 その4

「民法第772条 改正案 その3」では、民法を改正することについて考えてみたのですが、どうやら自民党のプロジェクトチームが、特例新法を作る案を纏めたようです。新聞報道ではいろいろな表現が使われており、良く実態が分かりません。 ただどうやら、民…

民法第772条 改正案 その3

「民法第772条 改正案 その1」で書いたように、この改正案によれば、「離婚後300日以内に子が生まれ、生まれるまでに母親が再婚していないときには、」どのような男性の子とも推定されません。 このように推定がない状態にすることによって始めて、前…

民法第772条 改正案 その2

「民法第772条 改正案 その1」の続きです。 (前回を要約するとこうなります。) 改正案はこうです。 第772条 1 妻が婚姻中に懐胎した子は、離婚後生まれた場合を除き、夫の子と推定する。 2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は夫の死亡の日…