労働生産性の原動力は賃金上昇

生産性を上げなければ賃金は上がらないという議論がある。現在の日本では、因果の方向は逆だろう。

費用をほとんどかけずに生産性をアップさせることができるなら、「生産性アップ→事業者の利益向上」となるけれでも、費用がかかるとなれば、そうはならない。これが生産性アップを図らない理由だ。

例えば良い機械を買えば生産が効率的になり、労働生産性が上がるとしよう。機械はただでは手に入らないから、買った後に減価償却をしなければならない。節約できる賃金と減価償却費を比べて、賃金の方が小さければ投資をせず、労働生産性が低いままの方が利益が大きい。

賃金が低いときは、労働生産性を引き上げないのが経営上合理的なのだ。賃金水準が高くなれば、設備投資が合理的になる。労働市場に需給がタイトになり、賃金が上がれば、企業は生産性引き上げに動き出す。生産性向上は賃金上昇の後にやってくるのだ。

まず、労働市場の需給をタイトにして賃金を引き上げることが大事だ。それが、設備投資、技術開発、新製品の開発を促し、企業の労働生産性の上昇をもたらす。そして、ついていけない企業は退出していくことになる。この退出が、低生産性の事業から相対的に高生産性の事業への労働力の移動につながり、日本経済の平均労働生産性の向上が達成される。

また、