民法第772条 様々なケース その3

民法第772条 様々なケース その2」での予告通り、離婚後、再婚のケースを取り上げます。 夫と離婚し、再婚しない、再婚を拒否された場合、夫と離婚し、再婚した場合に現れる組み合わせは、婚姻の解消の理由が離婚に変わるだけです。ただ、死後の人工授精が解消後も関係があったと変わります。 Ⅲ 夫と離婚し、再婚しない、再婚を拒否された場合
解消の理由婚姻中再婚前再婚後
25 離婚○●再婚せず再婚せず
26 離婚△▲再婚せず再婚せず
27 離婚再婚せず
28 離婚再婚せず
29 離婚○●再婚せず
30 離婚△▲再婚せず
Ⅳ 夫と離婚し、再婚した場合
解消の理由婚姻中再婚前再婚後
31 離婚○●
32 離婚△▲
33 離婚□■
34 離婚
35 離婚
36 離婚
37 離婚
38 離婚
39 離婚
40 離婚○●
41 離婚△▲
42 離婚□■
43 離婚
44 離婚
45 離婚
46 離婚○●
47 離婚△▲
48 離婚□■
まあ、現在、マスコミで取り上げられているのは、離婚後、再婚でき、かつ子の血縁上の父親が再婚後の夫であるケースだけです。この表でいえば、ケース33,36,39,42,45,48です。全体で48通りあるうちの6つだけです。ここだけを考えて解決策を作ると、それが他のケースに思わぬ波及効果を及ぼすことがありえます。 榊原富士子弁護士は、毎日新聞のインタビューで、「弁護士会内の議論も活発化しており、(弁護士)会としても近く対応に乗り出すと思われる」と述べられていますが、依頼者だけではなく全体像を見て、考えて頂きたいものです。マスコミの報道についても同じです。顕在化している問題のほかに、現在の制度がうまく機能しているが故に、潜在化している問題があることは十分考えられます。例えば、夫の子を身ごもったが、夫の暴力に耐えかねて離婚した女性は、現在の制度なら、特別の手続きをとらなくても、子を父親の嫡出子と認めさせることができ、扶養も要求できますし、子は将来、元夫が亡くなった場合に財産を相続することもできます。制度の変え方によっては、特別の手続きが必要になります。 全体としての制度には、原理原則が必要です。パッチワークでは困ります。 あと、幾つか違和感を持つところを。 1 行政手続きと司法手続きについての理解が一面的であるように思います。 現在、行政手続き=簡易な手続き=いい手続き、司法手続き=煩瑣な手続き=悪い手続きという論調になっています。 しかし、司法手続きで決まったことは、行政手続きでひっくり返すことは出来ませんが、行政手続きで決まったことを司法手続きでひっくり返すことは出来ます。 親子関係は長期的なもので、安定性が求められます。行政手続きに任せていい場合もあるでしょうが、司法手続きによるべき場合も多くあるはずです。 なお、最高裁の判断の範囲で行政手続きを整備したり、運用する場合は、この問題は起こりません。その意味で、最高裁の判決の論理の範囲に行政手続きを限るのは、合理性があります。 2 懐胎時期の差には関心が高まっているようですが、出産時期についてはほとんど意識されていないよう。 私は、婚姻解消後、再婚前に出産した場合の問題が非常に困難だと思っているのですが、その困難さが、理解されていないように思えます。 何故、困難かといえば、その時点では再婚するかどうか、再婚相手がこの血縁上の父親なのかどうかが分からないからです。子が出来れば自然に結婚するというわけではありません。 3 母親と子の利害が対立している可能性が無視されているような気がします。 母親は、元夫と接触を持ちたくないし、元夫の戸籍にも入れたくない。しかし、子は法律上の父親を必要としている、といった場合です。 無戸籍になるのを救済しなければならないという点には、コンセンサスがあるようですが、誰から、あるいは何から、誰を救済するのでしょう? 4 戸籍の問題に意識が集中して、戸籍手続きばかりが議論されています。 もちろんこれは大事ですし、日常的な事項に広く波及するので、そうなるのも無理はないと思います。しかし、民法の扶養、親権、相続について、どう考えているのでしょうか?民法を改正するのか、どうかはっきりさせる必要があります。 1とも絡んでくるのですが、行政手続きで親子関係を定め、長い時間がたって父親の扶養や相続の問題が起こったときに、司法手続きでひっくり返ると大変です。 基本法である民法をどうすり抜けるのかといったといった姑息な議論になってしまっている気がします。 5 基本的に、子の利益とは一体何なのか、これが良く分からなくなっている気がします。 現在の民法は、例え実際の親でない可能性があっても、ともかく、法律上の父親を決めなければならない。決めるのがこの利益だと考えています。一方、母親の中で、敢えて出生届を出さない方々は、血縁上の父でなければ、父親はいない方がいいと考えているのかもしれません。もっとも、これは血縁上の父親が法律上の父親になることが予定されているから、そう主張しているのかもしれません。 人気blogランキングでは「社会科学」の23位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング