労働市場の流動性とブラック企業

2016年5月16日付の日経新聞朝刊、「経済教室」に慶應義塾大学の山本勲先生が「総労働時間の上限規制を」という題で書かれています。

この中で「日本には違法に長時間労働を強いる『ブラック企業』」が存在するといわれる。本来であれば、そうした企業には人材が集まらず、自然と淘汰されるはずだ。そうならないのは、日本で雇用の流動性が低く、労働市場のチェック機能が働きにくいからだといえる。」と述べられています。

そういうこともあるでしょう。しかし、ブラック企業、これは必ずしも違法に長時間労働を強いるだけではないと思いますが、が増えた時期はは、非正規労働者が増え、その限りでは労働市場が流動的な構造に変わっていった時期と符合しています。

不況ゆえに、いい職場がなく、ブラックと分かっていても失業するよりはましということで務める。ゆえに人材が集まり、淘汰されないというのが本筋ではないでしょうか。流動性の問題とは関係が薄いように思われます。

もっとも、辞めようとしても暴力で辞めさせないというタイプもあり、この場合は流動性の問題かもしれません。これにはすでに、労働基準法に次のような規定が設けられています。

(強制労働の禁止)

第五条  使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

この実効性をどのように担保するかという問題はありますが、法制は整備されています。問題があれば、監督署に相談するといいでしょう。

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