2008-01-01から1年間の記事一覧

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その34

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その33」で示した「簡単な世代重複モデル」を前提にすれば、競争市場のメカニズムで効率的な資源配分を達成できるとは限らず、過剰な資本の蓄積が行われるおそれがありました。どのようなシステムを外部から与…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その33

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その32」の続きです。 (注)赤字は指数です。 今回は「2.4.2 世代重複モデル(overlapping generations model:OLG model):成長しないバブル」から始めます。 利他的な関係で各世代が結びついているこ…

何月生まれが一番多い?

「生年月日が同じ人は、何人いるの?」にシーラカンスさんからこういうコメントをもらいました。 そういえば子供を保育所に入れてみたところ、同じクラスで見渡すと年度始めに産んでいる人が割合多かったので、「ひょっとして誕生月によって結構バラつきがあ…

女性が結婚して姓が変わったときの年金

「水色の封筒に入ったねんきん特別便が来たら」に、シーラカンスさんからこんなコメントをいただきました。 1989年度(平成元年度)に就職し、その後1年半で結婚して姓が変わったものの、一つの企業で20年近く勤めてきているので…大丈夫だろうってタ…

水色の封筒に入ったねんきん特別便が来たら

社会保険庁がねんきん特別便を送ってきています。大勢の方が受け取られていて、いろいろブログに感想、疑問を書かれています。いろいろな方のブログを読んでいると、いくつか共通の疑問があるようです。私の知っている範囲で、解説します。 1 何で、私に送…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その32

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その31」までは無限に生きる個人、あるいは王朝を前提として議論してきました。このモデルは利他的な個人を想定してきました。前回でこのモデルの説明は終わり、今回からは、「2.4 市場調整の失敗:世代重…

2月は原油値下がり

「輸入原材料価格の高騰にどう対応すべきか?」で、原材料値上がりの対策を考えました。 原油などが値上がりしているから、こういった議論をしたのですが、2008年2月の貿易統計から「原油及び粗油」の1リットル当たりの単価を計算してみると、1月より…

生年月日が同じ人は、何人いるの?

自分と「生年月日が同じ人」は、日本人でどれ位いるでしょう? ある年に生まれた人をその年の日数で割ると、答えが出てきます。こんな数です。(うるう年の調節はしていません。) 生年月日が同じ人の数(人)西暦和暦人数1907明治40年4,42319…

「ねんきん特別便」 その3

「「ねんきん特別便」 その2」の続編です。 ポケットの中の清掃さんが「ねんきん特別便が来た」で >家に帰り着くと『ねんきん特別便』が置いてあったのだ。 >早速、年金記録のお知らせを確かめると… >…ん!? >国民年金の記録が二つだけ。 >一つは現在…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その31

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その30」に続いで、「2.3.6 実物的景気循環論への応用」の解説です。 前回説明したとおり技術的ショックには、予想されずに生じて永続するもの、予想されずに生じて効果が一時的なもので終わるもの、予想…

「ねんきん特別便」 その2

「「ねんきん特別便」」への追加情報です。 「厚生年金被保険者に係る「ねんきん特別便」については、経済団体の協力をいただきながら、事業主経由で送付することを検討しています。」(社会保険庁HP http://www.sia.go.jp/top/kaikaku/kiroku/070831shintyo…

国際出産

出生児の父母の国籍の組み合わせの2006年の結果が発表されました。(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/gaikoku07/03.html#1)表3です。 国際出産(人)組み合わせ2006年(A)2004年(B)増減(A-B)両親とも日本人1,…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その30

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その29」の続きです。 2.3.6 実物的景気循環論への応用 生産関数に対する一回限りの技術的ショックがあると均衡経路が変化し、その結果、定常状態に向かう経済の動きが単調なものではなくなります。これ…

夕張市 の人口

「夕張市 2007年末、人口12,000人をキープ」の続きです。 夕張市の人口(人)17年18年19年20年増減1月13,79813,38012,79812,169△6292月13,77713,35012,770△5803月13,61513,…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その29

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その28」の続きで、「2.3.5 モジリアーニ・ミラー定理と投資」です。 「企業の資金調達行動が投資水準や資本蓄積に一切影響しない」。これがモジリアーニ・ミラー定理です。 テキストの説明は、これまで…

コンメンタール その2

「コンメンタール」の続きです。 「また不完備契約理論については、これも労働経済学では、転職すると企業内での教育投資の効果が発揮できなくなるような当該企業固有の投資、これを企業特殊的投資というんですが、これがあるから不完備契約になるという理論…

コンメンタール

濱口先生が「学界展望における福井論文の紹介とコメント」で、こう書かれています。学術雑誌での座談会の発言をそのまま転載したものなので、少々分かりにくいです。解説をして見ます。別に絡むつもりはありません。 「この不完備契約理論というのは、労働者…

市場の失敗 その2 量子力学

「市場の失敗 その1」その1で述べたように現実の労働市場は、はなはだ不完全な物でしかありません。 これに加えて労働サービスの提供者である労働者は意志を持っており、労働サービスは買い手である企業の自由にはなりません。多かれ少なかれ労働者の意志が…

市場の失敗 その1

濱口先生が「労働者と使用者は決して対等ではない」で、こんなことを書かれています。少し長いのですが、引用します。 『東洋経済』2月16日号(特集「雇用漂流」)に掲載された私のインタビュー記事を、次の号が発売されたので、ここにアップしておきます。…

厚生経済学の第一命題

自由主義経済を擁護する理論的な根拠として、「自由市場経済で実現する資源配分は『パレート最適』である。」という「厚生経済学の第一命題」があります。 この命題は、ひどく抽象的で分かりにくいと思います。この命題にたどり着くまで、ケネーあるいはアダ…

パレート最適

自由主義経済を擁護する理論的な根拠として、「自由市場経済で実現する資源配分はパレート最適である。」という。「厚生経済学の第一命題」があります。この重要な命題にパレート最適という概念が使われています。厚生経済学にとっては、非常に重要な概念で…

消費者主権

「消費者主権」という言葉には、事実判断としての意味合いと価値判断的な意味合いの両方があります。 事実判断としては、自由な市場機構のもとでは、最終的には消費者が資源配分の決定権を持っているという事実を意味します。この場合には、消費者の購買力が…

補完性の原理と二重行政

「「規制権限の分権と二重行政」について その2」に引き続いて すなはらさんが、「続・規制権限の分権と二重行政」で、二重行政についての地方分権派の主張を、次のように要約されています。 「二重行政を解消しろ!」と叫ぶ人たちの議論は次のようになって…

輸入原材料価格の高騰にどう対応すべきか?

「原油価格上昇」で紹介したような輸入財価格の高騰が続いています。これにどう対応すべきなのか、歴史を振り返って考えてみました。 日本経済は、原材料を輸入に頼っており、輸入原材料の価格が大きく変化すると、経済はそれに適応するため大きな変化を遂げ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その28

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その27」の続きで、「2.3.4 リカードの中立命題と消費」の説明です。 リカードの中立命題は等価命題(equivalence theorem)とも呼ばれています。 次の条件の下では、t期の一人当たり政府支出(gt)が…

社会保障基金の怪

岩本先生が「社会保障基金の財政収支が不思議な動き」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/1733167.html)こんなことを書いていらっしゃるのを読んで、調べてみました。 『国民経済計算』2006年度確報での社会保障基金の財政収支が不思議な動きをして…

労働時間と賃金と健康問題とをそれぞれ切り離していいのかなぁ

hamachannさんが、「丸尾拓養氏のマクド判決批評」(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_45be.html)というエントリーを書かれています。一部引用します。 日経BIZPLUSに連載されている丸尾拓養氏の「法的視点から考える人事の現場の問…

「規制権限の分権と二重行政」について その2

「「規制権限の分権と二重行政」について」の続きです。 すなはらさんが、「続・規制権限の分権と二重行政」で、二重行政についての地方分権派の主張を「地方自治体が各地域のニーズに合わせて「個別労働関係紛争の処理」という事務を行えばよい,という話に…

「規制権限の分権と二重行政」について

すなはらさんが、「規制権限の分権と二重行政」でこんなことを書かれています。 実は,労働紛争を解決するために設置された機関としては,「都道府県労働委員会」という都道府県の機関も存在します。しかし,この労働委員会と労働局の違いはかなり難しい。例…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その27

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その26」の続きで、「2.3.3 トービンのqと投資関数」の解説です。 学生時代にトービンのqを習った方は、企業の投資行動を説明する理論として理解されていると思います。このテキストでは、これを代表的…