動学

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その47

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その46」の続きで、テキストの「3.3.3 モデルの枠組み」と「3.3.4 将来財市場と基本債券」に入ります。 2期間のモデルで説明されています。 仮定1 財の種類に関するもの=条件付き将来財 1 個人…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その46

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その45」の続きです。 3.3 不確実性と資産価格 もし、「個人間の取引を捨象した代表的個人モデルが、多くの個人が資産市場で活発に取引している経済モデルに正確に対応している」(テキスト123ページ)…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その45

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その44」から、大分間が空いてしまいましたが。 今回は、再確認です。消費パターンと利子率の関係です。 (3-14)式は、次の代表的個人の主体均衡条件を示す。 債券の割引価格=第1期の総消費÷第2期の総…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その44

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その43」で説明したモデルの特長は次の通りです。 1 所得の違いにもかかわらず個人の消費パターンが皆同じであり、したがって総消費のパターンと個人の消費のパターンがパラレルである。 2 割引債の市場で均…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その43

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その42」に続き、財市場と割引債市場の均衡条件について説明します。 まず、財市場から始めます。このモデルでは、財の種類は一つで、これを投入して生産を行うことはなく、消費するだけです。つまり、消費財…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その42

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その41」に続き、今回は「3.2 消費パターンの平準化と資産価格」に入ります。 「消費者には、各期一定の消費を維持しようとする性向があると仮定する。」とされています。日常の経験に照らしても、妥当でし…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その41

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その39」で、(粗)割引率、1+rは、現在財の価格、p1と将来財の価格p2の比p1÷p2であることを説明し、でこれが消費者の裁定行動を通じて実現されることを示しました。 「3.1.5 相対価格と限界代…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その40

今回は、「3.1.4 裁定市場と市場の効率性」の解説です。前回示した「粗割引率1+rはp2÷p1、つまり将来財と現在財の相対価格に等しい」理由をもう一度考えます。 ここで重要なのは、裁定取引、あるいは裁定機会という概念です。社会人の中には現実…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その39

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その38」の続きです。 今回から、「第3章 資産価格決定理論と代表的個人」に入ります。テキストに書かれているとおり、「代表的個人モデルが多くの主体が取引を行っている経済とどのような対応関係にあるのか…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その38

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その37」の続きです。 第2章の解説の最後として、今回は重複世代モデルの性質を、おさらいしておこうと思います。一定に留まるバブルの意義を再確認することが目的です。また、利子が付かず償還もされない政…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その37

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その36」で導いた位相図から得られるこの二つの定常状態の比較をしてみます。 (赤字は指数です。) 資本と政府債券の価格であるバブルについては既に示しました。 S点の資本kは、黄金律の水準でα1/(1-…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その36

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その35」に引き続いて、「2.4.8 バブルの経路」の説明を続けます。 前回も書きましたが、位相図2.12を導き出すのが目標です。このためには、バブルが一定に留まるΔP=0線と一人当たり実物資本が一定と…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その35

今回と次回は、「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その34」に引き続いて、「2.4.8 バブルの経路」の説明です。 (赤字は指数です。) (2008年4月21日、大幅に改定しました。) 図2.12に、位相図がありますが、これを導き出します。…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その34

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その33」で示した「簡単な世代重複モデル」を前提にすれば、競争市場のメカニズムで効率的な資源配分を達成できるとは限らず、過剰な資本の蓄積が行われるおそれがありました。どのようなシステムを外部から与…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その33

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その32」の続きです。 (注)赤字は指数です。 今回は「2.4.2 世代重複モデル(overlapping generations model:OLG model):成長しないバブル」から始めます。 利他的な関係で各世代が結びついているこ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その32

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その31」までは無限に生きる個人、あるいは王朝を前提として議論してきました。このモデルは利他的な個人を想定してきました。前回でこのモデルの説明は終わり、今回からは、「2.4 市場調整の失敗:世代重…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その31

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その30」に続いで、「2.3.6 実物的景気循環論への応用」の解説です。 前回説明したとおり技術的ショックには、予想されずに生じて永続するもの、予想されずに生じて効果が一時的なもので終わるもの、予想…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その30

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その29」の続きです。 2.3.6 実物的景気循環論への応用 生産関数に対する一回限りの技術的ショックがあると均衡経路が変化し、その結果、定常状態に向かう経済の動きが単調なものではなくなります。これ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その29

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その28」の続きで、「2.3.5 モジリアーニ・ミラー定理と投資」です。 「企業の資金調達行動が投資水準や資本蓄積に一切影響しない」。これがモジリアーニ・ミラー定理です。 テキストの説明は、これまで…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その28

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その27」の続きで、「2.3.4 リカードの中立命題と消費」の説明です。 リカードの中立命題は等価命題(equivalence theorem)とも呼ばれています。 次の条件の下では、t期の一人当たり政府支出(gt)が…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その27

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その26」の続きで、「2.3.3 トービンのqと投資関数」の解説です。 学生時代にトービンのqを習った方は、企業の投資行動を説明する理論として理解されていると思います。このテキストでは、これを代表的…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その26

今回は、わき道にそれます。飛ばしていただいても結構です。 「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その25」で、「今期の消費が、今期の所得、あるいは可処分所得によって決まるケインズ型の消費関数」と書いたのですが、少し誤解を生むかもしれな…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その25

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その24」の続きで、今回は、「2.3.2 消費関数の導出」です。 消費関数というと、今期の消費が、今期の所得、あるいは可処分所得によって決まるケインズ型の消費関数を、思い出す方が多いと思います。 消…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その24

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その23」までで、「2.2 資産価格と資本蓄積」を終わり、今回から、「2.3 新古典派成長モデルの実証的含意」に入ります。 今回は、この2.3全体を通じて前提されていることについて説明をしておきます…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その23

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その22」の続きで、今回は、第三のケースを検討します。 第三のケース 鞍点経路よりも消費が少なく、資産価格が高い点Cからスタートする場合 1 このケースでも、鞍点経路や点Bから出発したのと同様に、当初、…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その22

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その21」の続きで、今回は第二のケースを取り扱います。 第二のケース 鞍点経路よりも消費が多く、資産価格が安い点Bからスタートする場合 1 当初、資本も消費も増加します。 2 図2.5で鞍点経路A-Sよ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その21

新年、明けましておめでとうございます。いろいろなことが起こりそうな2008年ですが、いつもどおり、記事を書いていこうと思っています。気づかなかったのですが、昨年のうちにページヴューが20万を超えていました。お読みいただきありがとうございま…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その20

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その19」に続いて資本-価格平面の説明、図2.6の説明です。 「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18」を思い出しながら読んで下さい。 まず、Δk=0線を考えてみます。 この曲線は資本が変…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その19

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18」に続いてテキストの「2.2.10 鞍点経路と動学的な効率性」に進みたいのですが、その前に資本-価格平面を説明しておく必要があります。基礎固めです。図2.6の説明です。 「社会人のための『新…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その17」で唯一つ交点があることの説明をしました。 もし、経済がこの交点にあれば、(一人当たり)資本、(一人当たり)消費、財価格は変化しません。定常状態です。ミクロ静学で需要量、供給量がつりあい価…