動学

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その17

今回からは、「2.2.9 動学的な経路の導出:位相図を用いて」です。 今回は、基礎的な部分を説明します。くどいかもしれませんが、基礎を固めておくことは、特に社会人にとっては有益だろうと思います。 具体的には図2.2のグラフに描かれているΔk=…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その16

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その15」の続きです。 今回は、「2.2.8 定常状態における効率性:黄金律の定義」に進みます。「定常状態」と「黄金律」、「資本の過剰蓄積」については、既に「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その15

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その14」の仮定を列挙しておきます。 経済全体に関する仮定 仮定1 1種類の財が生産され、消費されるような経済(one sector economy)である。 (この財の種類は将来とも変わらないとします。)テキスト39ペ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その14

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その13」で予告したように、今回はこれまでの整理をします。 (2.31)式で示される差分方程式体系で、「『資本がいかに蓄積されていくのか?』と『資産価格がいかに決定されるのか』」が決まるのですが、…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その13

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その12」の続きです。 (2.25)式の右辺の第2項がゼロとなることが、横断条件、非ポンジー条件を満たすために必要です。これを示しているのが(2.26)式です。 オイラー方程式を価格の形で表した(2…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その12

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その11」の続きです。 今回は、「2.2.6 終点条件:横断条件と非ポンジー・ゲーム条件」です。 オイラー方程式からは、効用を最大化するためには、各期の消費の水準がどのようなバランスを保っていなけれ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その11

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その10」の続きです。 ここではオイラー方程式の別な理解の仕方が取り上げられています。 資本財(=消費財)価格が導入されます。これがなかなか理解が難しい。 貨幣の役割として交換の手段というのがありま…

選好と効用関数

「労働供給の異時点間代替(intertemporal substitution)」で、効用関数を使ったので、少し説明を。 選好関係 ミクロ経済学の消費者の理論の基礎にあるのは選好です。これから効用関数が導かれます。 消費者(家計)は、二つの消…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その10

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その9」に続いて、今回は「2.2.4 家計の異時点間の資源配分」を解説します。 「2.2.2 生産関数と労働市場」、「2.2.3 企業の行動」で家計がどのような所得を得るかが明らかにされました。これか…

労働供給の異時点間代替(intertemporal substitution)

効用関数の特定 t期の効用utは、消費(ct)と同時に余暇(1-lt)にも依存し、消費や余暇が増加すれば効用も増加するというのは、ごく一般的な効用関数です。この効用関数をさらに、次のように特定します。対数線形です。 ut=lnct+bln(1-l)t b>0 …

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その9

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その8」に続いて、今回は企業の行動の解説です。 企業は誰に所有されるのか。どのような制約を受けるのか。どのような行動をとるか。この3つが、「2.2.2 生産関数と労働市場」、「2.2.3 企業の行動…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その8

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その7」までの準備を基に、いよいよ、本論、「2 資産価格と資本蓄積」に入ります。 経済を構成する家計が予算制約の下で効用を最大化するというのが、ミクロ経済学の基本的な公理です。これをマクロ動学に導入…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その7

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その6」に続いて、今回は「2.1.3 前向きの解と後ろ向きの解」の解説です。 ここでのテーマは(2.3)で表される完全予見のもとで、投資家が裁定行動を取ったとき市場で得られるt期の株価、これは(2.…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その6

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その5」に続いて、「第2章 合理的期待形成と新古典派成長モデル」に入ります。 今回は、「第1節 合理的期待形成の定義:裁定条件式を通して」の説明に入ります。この節は、社会人にとって、このテキストの中…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その5

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その4」で、テキストに入るための準備は終わりました。いよいよ、第1章を読み始めましょう。 この章は「マクロ経済モデルの座標軸」と題されています。この章を読むとき、この章が序章ではないということに注…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その4

定常状態 定常状態の性質 定常状態の性質を調べてみましょう。 まず、「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その3」の復習です。 kt=kt-1となるkt-1の水準、つまり資本がもう変化しなくなる水準を考えてみます。この水準をksで示すこと…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その3

資本の蓄積経路 さて、今回は、「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その2」で示した仮定の下で、どのように資本が蓄積されていくか、その経路を考えます。 資本は如何に蓄積されていくのか 基本は、今期の資本(kt)=前期の資本(kt-1)+今…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その2

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その1」の続きです。 以下では、赤字はべき乗を青字は期を表します。 テキストを読み始める前に、今回と次回、テキストにはないミクロ的な基礎のない入門用マクロ動学モデルを考えて見ます。 このモデルは基本…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その1

一橋大学の斎藤誠先生が書かれた『新しいマクロ経済学』(有斐閣)は学部レベルのマクロ経済学から上級のマクロ経済学に進むための橋渡しとなる教科書として評価の高い本です。 ここで、学部レベルのマクロ経済学というのは、IS-LM分析を軸としたケインズ…