社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その15
「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その14」の仮定を列挙しておきます。
経済全体に関する仮定
仮定1 1種類の財が生産され、消費されるような経済(one sector economy)である。
(この財の種類は将来とも変わらないとします。)テキスト39ページ。
仮定2 生産された財は、消費財ばかりではなく資本財(投資に用いられる財)としても利用可能である。1財モデルです。テキスト39ページ。
仮定7 人口は成長しない。労働力は一定でN。外生である。(人口が外生で決まり、増加する場合には、一人当たりの資本蓄積の率が低下します。)テキスト40ページ。
仮定19 貨幣は存在しない。
生産物市場の均衡に関する仮定
仮定15 企業の資本需要が家計の資本供給に等しい。(2.29)式
生産と労働市場に関する仮定
仮定3 今期の粗生産量Ytは、前期の資本(Kt-1)と今期の労働(Lt)の投入から決まる。
Yt=F(Kt-1,Lt) (2.12)式
以下では粗生産を単に生産と書きます。生産には労働が必要です。
仮定4 生産関数の限界生産性は、正で逓減していく。
F1,F2>0,F11,F22≦0 テキスト40ページ
(資本と労働は代替可能です。生産関数は微分可能、つまりなめらかです。)
仮定5 生産関数は、資本と労働に関して一次同次。つまり規模に関して収穫一定。資本も労働もα倍になれば、生産もα倍になります。 テキスト40ページ。
αYt=F(αKt-1,αLt)
仮定6 家計は賃金の水準にかかわらず、常に1単位の労働を供給する。テキスト40ページ。
仮定8 労働市場は常に均衡している。言い換えると労働投入と労働供給は常に一致している。テキスト40ページ。
N=Lt
仮定9(稲田の条件)資本がなければ生産はできない。
f(0)=0、f’(0)=∞、f’(∞)=0 (2.15)式
仮定10 資本の減耗率はδ。1>δ>0。δは定数です。テキスト42ページ。
なお、δはギリシャ文字の小文字で、デルタと読みます。
仮定13 家計が企業(資本)を所有する。テキスト41ページ。
仮定14 企業は利潤極大化行動をとる。テキスト41ページ。
家計の効用極大化に関する仮定仮定16 家計の効用関数は(2.10)式で示される。ここで、ρは一定、各世代の効用uは消費の増加関数、かつ効用の増加は逓減する(効用は上に向かって凸の関数)、現世代の家計の効用は次世代の家計の効用の増加関数である。(次世代の効用も考慮した効用関数です。)
仮定17 家計は効用極大化を図る。(仮定というよりは公理とした方がいいかもしれませんが。)
仮定18 非ポンジー条件。テキスト45ページ。
この家計の効用関数がミクロ的経済学的基礎です。入門モデルで用いた仮定11と違うところです。
仮定11 家計は、所得の一定割合βを貯蓄に、残る1-βを消費に振り向ける。
(2.31.a)式には、この効用極大化を源とはしていません。他の3本の式は効用極大化の仮定が反映されています。ミクロ的経済学的基礎なしに所得の一定割合が消費されるとすると(2.31.b)式、(2.31.c)式、(2.31.d)式の代わりにc=(1-β)yという式が登場します。一方、(2.19)式を簡単にしたものに仮定15組み込んだ式を作ります。この二つの式を合わせると、前期の資本が決まれば今期の資本が決まるという単純なモデルになります。
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