社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その11

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その10」の続きです。 ここではオイラー方程式の別な理解の仕方が取り上げられています。 資本財(=消費財)価格が導入されます。これがなかなか理解が難しい。 貨幣の役割として交換の手段というのがあります。その他に計算単位としての役割もあります。また、価値の保蔵手段というのもあるのですが、このモデルではこの意味で貨幣が存在することを想定していないようです。ここでの説明は、恰も貨幣があるような説明になっているので、違和感を感じるかもしれません。 このモデルで交換の対象は何か。貨幣ではあり得ません。また、労働との交換は賃金という形ですでに決められています。現時点で財と財自体を交換するなら価格は常に1ですから、この交換ではありえません。 すると考えられるのは、時期の違う財との交換だけです。過去の財との交換はできませんから、将来財との交換になります。この価格というのは将来材との交換の際の計算に使われる価格です。 次ぎに、現在価格は限界効用で計算されています。「選好と効用関数」で書いたように、限界効用の値そのものには特段の意味はありません。任意の値を与えていいのです。したがって、このようにして決まる価格も任意の値としていいのです。 価格も限界効用も、意味があるのはその値ではなく、その比です。これから(2.21)を導いてみましょう。 ここでt期の価格、限界効用とt+1期の価格、限界効用の比を考えてみましょう。 限界効能の比、u'(ct+1)/u'(ct)は、「選好と効用関数」で書いたように、限界代替率です。つまり効用を一定に保つとき1期後に追加される財1単位が現在の財の追加分何単位に当たるかを示しています。 限界代替率が価格比に等しいのが効用最大化の必要条件です。 したがって、効用を最大化したときには、pt+1/pt=u'(ct+1)/u'(ct)がすべてのt、t+1について成立しています。これ自体からは(2.21)は導けません。例えば、pt=1/ku'(ct)、pt+1=1/k/=u'(ct+1)でも条件は満たされています。しかし、限界効用の値自体には意味がないのでu'をすべてk倍しても問題はありません。 したがって、効用を最大化したとき(2.21)がt期にもt+1期にも成立します。 (2.22)は(2.21)をオイラー方程式に代入したものです。 「現在価格で表した資産の収益率(現在価格で計った配当+キャピタルゲイン)が時間選好率に等しい」ことを示しています。 人気blogランキングでは「社会科学」の42位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング