社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その22

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その21」の続きで、今回は第二のケースを取り扱います。

第二のケース 鞍点経路よりも消費が多く、資産価格が安い点Bからスタートする場合

1 当初、資本も消費も増加します。

2 図2.5で鞍点経路A-Sよりも上を進むので、いつかは△k=0線とぶつかります。ぶつかる点をB’で示しています。

3 ぶつかった時点で、資本は減少し始めます。一方、消費は増加を続けますので、左上へと進んでいきます。(前回述べた4番目のケースは始点が△K=0より上にあるケースですが、これは点Bからの経路の一部になります。)

消費が変はするのと同時に資産価格も変化しますので、その変化を図2.6で示しましょう。

1 当初資本は増加し、資産価格は下落します。

2 図2.6では、逆に鞍点経路A-Sよりも下を進むので、やはりいつかは△k=0線とぶつかります。ぶつかる点はB’で示されます。

3 ぶつかった時点で、資本は減少し始めます。一方、資産価格は下落を続けますので、左下へと進んでいきます。

4 さらに進むと、B’’点に至ります。図2.5で分かるとおり、ここでは資本がゼロになっています。また、図2.6から分かるとおり、資産価格は、正のかなり低い値になっています。

5 資本がゼロになると稲田の条件(f(0)=0:資本がゼロのときは生産量はゼロ)から、経済は生産量ゼロつまり、消費もゼロになります。これは、図2.5で点B’’から点O(原点)へのジャンプとして示されます。同時に、資産価格は無限大になります。これは図2.6で点B’’からK=0の半直線のぬ無限に上に伸びたところへのジャンプとして示されます。

なぜ、資産価格が無限大になるかといえば、稲田の条件:f’(0)=無限大ですから、消費をゼロにしてすべてを投資し、次期の消費を増やすほうが望ましいからです。

(2.31)式で消費c=0のとき、限界効用は無限大です(2.2.1の効用関数の仮定から)から、資産価格は無限大です。

ここで、資産価格がジャンプすることに注意してください。ジャンプが生じるのであれば、それ以前に資産を買っておき、価格が無限大になったときに売るという裁定取引が可能です。

完全予見を前提していますから、初期時点で、この取引ができます。この取引が行われれば、初期時点で資産に対する需要が発生し資産価格が上昇します。同時に消費は減少します。この資産価格の上昇と消費の減少は、資産価格、消費が点Aの水準に至るまで続きます。つまり、初期時点で点Bから出発することはありえないのです。

したがって、第二のケースは現実には存在しません。これが今回の結論です。

次回は、第三のケース、つまりA点より消費水準が低く、資産価格が高い点Cからの出発が可能であるかどうかを検討します。

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