社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その31

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その30」に続いで、「2.3.6 実物的景気循環論への応用」の解説です。

前回説明したとおり技術的ショックには、予想されずに生じて永続するもの、予想されずに生じて効果が一時的なもので終わるもの、予想されていて効果が永続するもの、予想されていて効果が一時的なものの4通りがあります。注意が必要なのは、代表的個人は発生したショックの効果が一時的なものか永続するものなのかを直ちに把握していると言うことです。

このようなショックの種類によって定常状態の変わり方は同じですが、そこへ至る鞍点均衡経路には差が出ます。今回は、この経路がどのように変化するかを考えます。簡単化のショックは常に生産性の上昇を伴うと仮定します。なお、生産性が下がる場合も同じように考えることができます。

1 予想されず、効果が永続するショック

この場合、ショックが発生した段階の一人当たり資本をk0とします。ショックの発生と同時に定常状態はSからS‘に移動します。同時に、鞍点均衡経路は、A→SからB→S’に変わります。同じ一人当たり資本に対する均衡消費は増加します。このため限界効用は小さくなります。そして、均衡資本価格は低下します。完全予見を前提にすると、均衡価格が変化すると直ちに価格は変化します。これに伴って直ちに消費は増加します。つまり経済はショックの発生と同時にAからBへジャンプします。

2 予想されず、効果が一時的なショック

この場合、ショックが発生した段階で定常状態はSからS‘に移動し、効果が消えた時点で元のSに戻ります。同時に、鞍点均衡経路は、A→SからB→S’に変わり、そしてB→S’ からA→Sに戻ります。

この場合、最初にAからBよりは消費水準の低いCに移り、元の経路上の点Dに向かいます。このDへ戻るのはショックの効果が消えた時点です。なぜなら、ショックが消えた時点では鞍点均衡経路は、元のものに戻っているからです。

3 予想され、効果が永続するショック

この場合、ショックが発生すると予想された時点から変化が始まります。完全予見ですから、起こるはずの変化を織り込んで現在の行動を決めるからです。

定常状態や鞍点均衡経路は、予想されていないときと同じように変化しますが、予想された時点から変化が始まり、ショックが発生した時点で新しい均衡経路に乗ります。

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