社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その25

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その24」の続きで、今回は、「2.3.2 消費関数の導出」です。 消費関数というと、今期の消費が、今期の所得、あるいは可処分所得によって決まるケインズ型の消費関数を、思い出す方が多いと思います。 消費関数の本質は、今期の消費が何で決まるかを示すことです。このモデルでの消費関数の導出も、それを目指しています。 これまで、議論されてきたモデルで消費については、いくつかのことが分かっています。整理すると、次のようになります。 1 消費総額 永遠に生き続ける代表的個人が合理的に行動すると、そして、この個人が負債を返済しないですますことができないとすれば、将来の賃金と現在の手持ち資金の割引現在価値と将来の消費の割引現在価値は等しくなる。(2.25)式の右辺第3項がゼロ。 2 隣接する2期での消費の配分 代表的個人が、t期の予算制約((2.19)式)の下で効用関数((2.11)式)を最大化するときに、t期の消費とt+1期の消費の関係はオイラー方程式((2.20)式)の関係を満たす。 この二つの関係から、t期の消費がどのように決まるかを考えていきます。 いくつかのステップを踏みます。 まず第一番にオイラー方程式((2.20)式)の拡張です。この式は隣接する二つの期の消費の関係を示すものです。基本的なアイディアはこうでした。ある期の財の消費を断念し、その財をレンタルすることによって、次の期に収益を上げ、次の期の消費を増やすことが可能である。その期の消費する限界効用と次期に消費する限界効用を比較するためには次期の効用を時間選好率で割り引く必要があります。このようなて比較を行って、そのもっとも良いバランスを代表的個人が選ぶことにより、二つの期の消費のバランスが決まる。 これを基に考えると、消費を断念し、財をレンタルする期間が1期でなければならないという理由はありません。2期に延ばし、2期後に消費するという選択も可能です。この場合、1単位の消費を断念して得られる2期後の消費財は(1+x―δ)×(1+xt+1―δ)となります。なお、レンタル料は各期で異なります。また、限界効用は2期分割引かなけu‘(c)={(1+x―δ)×(1+xt+1―δ)}/{(1+ρ)×(1+ρ)}×u’(ct+1) すると、2期先送りの場合のオイラー方程式は、次のようになります。 u‘(c)={(1+x―δ)×(1+xt+1―δ)}/{(1+ρ)×(1+ρ)}×u’(ct+1) xt―δを実質利子率rtと定義しましたから、これを代入します。すると、次のようになります。 u‘(c)={(1+r)×(1+rt+1)}/{(1+ρ)×(1+ρ)}×u’(ct+1) 3期、4期の場合も同じように考えることができます。j期の場合の式が(2.37)式です。 なお、この式の右辺の係数の分子で使われているΠという記号はiがゼロからj-1になるまでかけ算を繰り返すという意味です。 このように考えると、t期の消費ctを基準にして、t+1期から無限の先の期までの消費cの相対的水準が決定されます。 さて、第2段階に移ります。 消費の総額は上の1で決まっていますから、すべての期の消費の相対的水準が決まれば、 今期、次期、そして将来の各期の消費の絶対水準は消費の総額の一定割合として決まります。 第3段階として、この割合がどう決まるかを考えます。 (2.37)式を変形して省らの消費に対する今期の消費の割合を示す式を作りましょう。 u‘(c)/u’(ct+1)=Πi=0,j-1(1+r)/(1+ρ)j 分かるとおり、実質利子率rが高いほど今期の消費の割合が大きく、時間割引率が高いほど今期の消費の割合が低くなります。 以上を、まとめると、今期の消費は、今期以降の実質利子率と将来の賃金と現在の手持ち資金の割引現在価値の増加関数であることになります。これが(2.38)式です。 さて、私にも分からないことがあります。これまでの説明で分かるとおり、今期の消費は時間割引率の減少関数でもあるはずですが、これは、この消費関数に含まれていません。ρは一定という仮定から落としてあるのかもしれません。 細かいことを気にするようで気が引けるのですが、この「2.3.2 消費関数の導出」という表題がバランスが良くない気がします。確かに消費関数を導出しているのですから、そうおかしいわけではないのですが、次の節で投資関数を導出していて、こちらの表題は「トービンのqと投資関数」です。「・・関数の導出」で統一するか、「フリードマンの恒常所得と消費関数」とした方が良いような気がするのですが。いや、つまらないことです。本筋とは関係ありません。 ここをクリック、お願いします。 人気blogランキング 人気blogランキングでは「社会科学」では31位でした。