マクロ経済学

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その27

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その26」の続きで、「2.3.3 トービンのqと投資関数」の解説です。 学生時代にトービンのqを習った方は、企業の投資行動を説明する理論として理解されていると思います。このテキストでは、これを代表的…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その26

今回は、わき道にそれます。飛ばしていただいても結構です。 「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その25」で、「今期の消費が、今期の所得、あるいは可処分所得によって決まるケインズ型の消費関数」と書いたのですが、少し誤解を生むかもしれな…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その25

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その24」の続きで、今回は、「2.3.2 消費関数の導出」です。 消費関数というと、今期の消費が、今期の所得、あるいは可処分所得によって決まるケインズ型の消費関数を、思い出す方が多いと思います。 消…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その24

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その23」までで、「2.2 資産価格と資本蓄積」を終わり、今回から、「2.3 新古典派成長モデルの実証的含意」に入ります。 今回は、この2.3全体を通じて前提されていることについて説明をしておきます…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その23

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その22」の続きで、今回は、第三のケースを検討します。 第三のケース 鞍点経路よりも消費が少なく、資産価格が高い点Cからスタートする場合 1 このケースでも、鞍点経路や点Bから出発したのと同様に、当初、…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その22

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その21」の続きで、今回は第二のケースを取り扱います。 第二のケース 鞍点経路よりも消費が多く、資産価格が安い点Bからスタートする場合 1 当初、資本も消費も増加します。 2 図2.5で鞍点経路A-Sよ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その21

新年、明けましておめでとうございます。いろいろなことが起こりそうな2008年ですが、いつもどおり、記事を書いていこうと思っています。気づかなかったのですが、昨年のうちにページヴューが20万を超えていました。お読みいただきありがとうございま…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その20

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その19」に続いて資本-価格平面の説明、図2.6の説明です。 「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18」を思い出しながら読んで下さい。 まず、Δk=0線を考えてみます。 この曲線は資本が変…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その19

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18」に続いてテキストの「2.2.10 鞍点経路と動学的な効率性」に進みたいのですが、その前に資本-価格平面を説明しておく必要があります。基礎固めです。図2.6の説明です。 「社会人のための『新…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その18

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その17」で唯一つ交点があることの説明をしました。 もし、経済がこの交点にあれば、(一人当たり)資本、(一人当たり)消費、財価格は変化しません。定常状態です。ミクロ静学で需要量、供給量がつりあい価…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その17

今回からは、「2.2.9 動学的な経路の導出:位相図を用いて」です。 今回は、基礎的な部分を説明します。くどいかもしれませんが、基礎を固めておくことは、特に社会人にとっては有益だろうと思います。 具体的には図2.2のグラフに描かれているΔk=…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その16

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その15」の続きです。 今回は、「2.2.8 定常状態における効率性:黄金律の定義」に進みます。「定常状態」と「黄金律」、「資本の過剰蓄積」については、既に「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その15

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その14」の仮定を列挙しておきます。 経済全体に関する仮定 仮定1 1種類の財が生産され、消費されるような経済(one sector economy)である。 (この財の種類は将来とも変わらないとします。)テキスト39ペ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その14

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その13」で予告したように、今回はこれまでの整理をします。 (2.31)式で示される差分方程式体系で、「『資本がいかに蓄積されていくのか?』と『資産価格がいかに決定されるのか』」が決まるのですが、…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その13

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その12」の続きです。 (2.25)式の右辺の第2項がゼロとなることが、横断条件、非ポンジー条件を満たすために必要です。これを示しているのが(2.26)式です。 オイラー方程式を価格の形で表した(2…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その12

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その11」の続きです。 今回は、「2.2.6 終点条件:横断条件と非ポンジー・ゲーム条件」です。 オイラー方程式からは、効用を最大化するためには、各期の消費の水準がどのようなバランスを保っていなけれ…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その11

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その10」の続きです。 ここではオイラー方程式の別な理解の仕方が取り上げられています。 資本財(=消費財)価格が導入されます。これがなかなか理解が難しい。 貨幣の役割として交換の手段というのがありま…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その10

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その9」に続いて、今回は「2.2.4 家計の異時点間の資源配分」を解説します。 「2.2.2 生産関数と労働市場」、「2.2.3 企業の行動」で家計がどのような所得を得るかが明らかにされました。これか…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その9

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その8」に続いて、今回は企業の行動の解説です。 企業は誰に所有されるのか。どのような制約を受けるのか。どのような行動をとるか。この3つが、「2.2.2 生産関数と労働市場」、「2.2.3 企業の行動…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その8

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その7」までの準備を基に、いよいよ、本論、「2 資産価格と資本蓄積」に入ります。 経済を構成する家計が予算制約の下で効用を最大化するというのが、ミクロ経済学の基本的な公理です。これをマクロ動学に導入…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その7

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その6」に続いて、今回は「2.1.3 前向きの解と後ろ向きの解」の解説です。 ここでのテーマは(2.3)で表される完全予見のもとで、投資家が裁定行動を取ったとき市場で得られるt期の株価、これは(2.…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その6

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その5」に続いて、「第2章 合理的期待形成と新古典派成長モデル」に入ります。 今回は、「第1節 合理的期待形成の定義:裁定条件式を通して」の説明に入ります。この節は、社会人にとって、このテキストの中…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その5

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その4」で、テキストに入るための準備は終わりました。いよいよ、第1章を読み始めましょう。 この章は「マクロ経済モデルの座標軸」と題されています。この章を読むとき、この章が序章ではないということに注…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その4

定常状態 定常状態の性質 定常状態の性質を調べてみましょう。 まず、「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その3」の復習です。 kt=kt-1となるkt-1の水準、つまり資本がもう変化しなくなる水準を考えてみます。この水準をksで示すこと…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その3

資本の蓄積経路 さて、今回は、「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その2」で示した仮定の下で、どのように資本が蓄積されていくか、その経路を考えます。 資本は如何に蓄積されていくのか 基本は、今期の資本(kt)=前期の資本(kt-1)+今…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その2

「社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その1」の続きです。 以下では、赤字はべき乗を青字は期を表します。 テキストを読み始める前に、今回と次回、テキストにはないミクロ的な基礎のない入門用マクロ動学モデルを考えて見ます。 このモデルは基本…

社会人のための『新しいマクロ経済学』解説 その1

一橋大学の斎藤誠先生が書かれた『新しいマクロ経済学』(有斐閣)は学部レベルのマクロ経済学から上級のマクロ経済学に進むための橋渡しとなる教科書として評価の高い本です。 ここで、学部レベルのマクロ経済学というのは、IS-LM分析を軸としたケインズ…