小野理論

続小野理論 最終回

「続小野理論 その9」の続きです。今回が最終回です。 Ⅶ 不況定常状態 1 流動性の罠 実質残高(貨幣)の限界効用に下限β>0が存在するとしよう。実質で測った貨幣をいくら持っていても追加的な貨幣から得られる効用が一定水準より下がらないということを…

続小野理論 その9

「続小野理論 その8」の続きです。 Ⅵ 金融資産が存在する経済での完全雇用一般均衡 金融資産が存在する経済で、もし、一般均衡つまりすべての市場で均衡が達成されるとしたら、そこでは実物量、賃金、一般物価水準がどのような値に決まるかを考えよう。第5…

続小野理論 その8

「続小野理論 その7」の続きです。 Ⅴ 市場での調整 1 ストック(≡金融資産)市場の調整 このモデルでは実物資産(土地や実物資本財)を想定していないので、ストックは貨幣と株式の二つである。この二つの市場は、調整速度が速く、常に需給が均衡すると仮…

続小野理論 その7

「続小野理論 その6」の続きです。 Ⅳ 企業の最適化行動と企業価値 このモデルでは、企業は利潤最大化を目標として行動する。企業は労働を投入して、財を生産し、市場に供給するものと捉えられる。企業の利益はすべて配当として家計に分配される。 企業の労…

続小野理論 その6

「続小野理論 その5」の続きです。 3 二つの予算制約の下で基本方程式を満たす行動 家計は、一方で、フローの予算制約、ストックの予算制約のもとで、基本方程式を満たすように、最適な現在の実質消費、実質消費の成長率、実質貨幣保有量、実質収益資産保…

続小野理論 その5

「続小野理論 その4」の続きです。 2 予算制約 均衡条件だけでは家計の行動は決定されない。家計が決定することができず、所与のものとして受け入れなければならないものがある。また、行動できる範囲の制限が必要である。前者は価格体系(価格が決まれば…

続小野理論 その4

「続小野理論 その3」の続きです。 Ⅲ 家計の最適化行動 1 消費と貯蓄、資産配分の決定 家計は、その期の実質所得をその期に消費するか、貯蓄するかを選べる。貯蓄する場合には貨幣を保有して流動性を得て、次期に消費するか、株式(収益性資産)を保有して…

続小野理論 その3

「続小野理論 その2」の続きです。 このモデルで用いられている特徴的な定義などは次のとおりである。 (特徴的な定義1)流動性プレミアム:流動性の限界効用を消費の限界効用で割ったもの。(限界効用を限界効用で割るので無名数になると私は考えているが…

続小野理論 その2

「続小野理論 その1」の続きです。今回は、小野モデルで使われている仮定のまとめです。定義については、次回。 Ⅱ 小野モデルの仮定と定義 1 特徴的な仮定 不況均衡が存在しえるのは、次の特徴的な仮定からである。 (特長的な仮定1) 代表的な家計は各期…

続小野理論 その1

「小野理論」のやり直しです。 ここで取り上げるのは小野善康『金融』(岩波書店)第5章までの小野モデルです。勉強の途中であり、浅学菲才のみで書いているので間違っている可能性は大いにあります。そのつもりでお読みいただきたい。 Ⅰ 小野モデルの特長 …