続小野理論 その1
「小野理論」のやり直しです。
ここで取り上げるのは小野善康『金融』(岩波書店)第5章までの小野モデルです。勉強の途中であり、浅学菲才のみで書いているので間違っている可能性は大いにあります。そのつもりでお読みいただきたい。
Ⅰ 小野モデルの特長
小野モデルは、不完全雇用・物価下落均衡を説明できる動学的なモデルである。このモデルには、二つの定常が存在する。「完全雇用一般均衡」(完全雇用が達成され、物価が安定する一般均衡)と「不況定常状態」(労働市場は不均衡で不完全雇用であるが、他の市場は均衡し、定率での物価の下落が続く定常状態)の二つである。不均衡でかつ定常であるという不思議な状態を説明できるところが、小野理論の魅力です。
財市場でも均衡が成立する。つまり、完全雇用生産が行われ、それがすべて消費される。生産、消費は時間を通じて一定である。
実質貨幣市場は均衡している。
実質収益資産市場も均衡している
貨幣賃金率は一定である。実質賃金率も一定である。
一般物価水準も一定である。
収益資産の価格も一定である。
収益資産の名目収益率(名目利子率)、流動性プレミアム、消費の利子率、時間選好率はすべて等しく、一定である。
これは、流動性プレミアム、消費の利子率、時間選好率を除くと、ケインズの意味での古典派をマクロモデル化したものと同じではないかと思う。言い換えれば、古典派モデルを動学化したものであるといえるのではないだろうか。
2 不況定常状態
不況定常状態は、次のような特性を持つ。
労働市場では、不完全雇用になる。労働市場は均衡していないし、家計の主体的均衡も達成されていない。
財市場で市場均衡が成立する。ただし、不完全雇用に対応する生産が行われ、それがすべて消費される。生産、消費は時間を通じて一定である。生産、消費は完全雇用の水準を下回る。
実質貨幣市場は均衡している。
実質収益資産市場も均衡している。
一般物価水準も、貨幣賃金率と同じ割合で低下し続ける。
貨幣賃金率は一定の割合で低下し続ける。実質賃金率は一定である。
収益資産の価格も一定の割合で低下し続ける。
最後の三つから、この状態はデフレ均衡であるともいえる。
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