続小野理論 その4
「続小野理論 その3」の続きです。
Ⅲ 家計の最適化行動
1 消費と貯蓄、資産配分の決定
家計は、その期の実質所得をその期に消費するか、貯蓄するかを選べる。貯蓄する場合には貨幣を保有して流動性を得て、次期に消費するか、株式(収益性資産)を保有して収益を得て次期に消費するかを選べる。
家計は、これらの選択肢のうちどれを選ぶかを効用最大化の観点から決定する。(ここでは、将来、実質所得はいずれ消費することが予定されているわけではない。)
収益資産で保有するケース
期間収益資産で保有し、その後、収益資産を消費財に変えて消費する場合、この期間は流動性がゼロ(仮定7)なので、流動性から効用は得られない。1期間後には、
1+名目収益率-一般物価上昇率
の購買力が得られるので、1期後の実質消費は、これだけになる。この実質消費から得られる効用と等しい効用を得るために必要な現在の実質消費の量を考えると、これから時間選好率を差し引いたものになる。つまり、現在の実質消費で測ると、
1+名目収益率-一般物価上昇率-時間選好率
となる。これを消費の利子率を用いて表現すると
1+名目収益率-消費の利子率 【1】
となる。これが収益資産で保有し、1期間後に消費するのと等しい限界効用を与える現在の実質消費財の量である。
1期間貨幣(流動資産)で保有し、その後、貨幣(流動)資産を消費財に変えて消費する場合、この期間は収益性がゼロ(仮定7)であることを 考慮すると、1期間後には、
1-一般物価上昇率
の購買力が得られるので、1期後の実質消費は、これだけになる。この実質消費から得られる効用と等しい効用を得るために必要な現在の実質消費の量を考えると、これから時間選好率を差し引いたものになる。つまり、現在の実質消費で測ると、
1一般物価上昇率-時間選好率
となる。これを消費の利子率を用いて表現すると
1-消費の利子率
となる。これが1単位の実質所得を現在消費せずに流動資産で保有し、1期間後に消費するのと等しい限界効用を与える現在の実質消費財の量である。しかし、貨幣(流動資産)を保有した場合には、流動性が増加するので、現在、この追加された流動性から限界効用を得られる。この効用と等しい効用を得るために必要な現在の消費の追加量を考えると、次の式が成り立つ。
流動性の限界効用×1=消費の限界効用×必要な現在消費の追加量
したがって、
必要な現在消費の追加量=流動性の限界効用÷消費の限界効用
となる。これは(定義1)により流動性プレミアムである。
以上を合わせると、1単位の実質所得を現在消費せず、貨幣(流動性資産)で1期間保有し、その後、消費した場合の限界効用と等しい限界効用を与える現在の消費の量は、
1-消費の利子率+流動性プレミアム 【2】
である。
貯蓄の均衡 均衡において、あるいは資産の最適配分が行われている場合には、【1】と【2】は等しくなければならない。何故ならどちらかが大きければその資産により多くの貯蓄を配分した方が効用が高まるからである。
上の【1】と【2】を比べれば明らかなように、均衡においては
名目収益率=流動性プレミアム 【3】
が成立する。
消費するケース
以上の説明を振り返ってみよう。実質所得を消費せず収益資産で保有し将来消費することで将来得られる効用と流動性資産で保有して将来消費することで得られる、現在の流動性から得られる現在の限界効用と将来消費することにより得られる将来の限界効用を、それらと等しい現在の限界効用をもたらす現在の消費の量に換算して比較するという手法を取った。現在、1単位の実質所得を追加して消費した場合に得られる現在の限界効用をもたらすために必要な消費の量は、トートロジーであるが1単位である。
三つの選択肢の均衡 利子率の基本方程式すると、【1】や【2】が1より大きければ、現在の実質所得を消費せず、収益性資産なり、流動性資産なりで保有する、つまり、貯蓄する方が有利である。すると消費と貯蓄の均衡において、
1+名目収益率-消費の利子率=1
1-消費の利子率+流動性プレミアム=1
が成立していなければならない。これは、
名目収益率=消費の利子率(時間選好率+一般物価上昇率)=流動性プレミアム
を意味する。これが現在の実質所得を、現在消費すること、収益性資産で1期間保有しその後消費すること、流動性資産で1期間保有し、その後消費することの間で優劣がない条件、均衡条件である。消費と貯蓄の配分、貯蓄する場合の資産配分が同時に最適化され他時に成立する条件である。この条件を小野(2009)では、「利子率の基本方程式」と呼んでいる。ここで、消費の利子率は、現在の実質消費水準と実質消費の成長率によって決まることを思い出そう。
利子率の基本方程式は、家計が、最適な現在の実質消費、実質消費の成長率、実質貨幣保有量、実質収益資産保有量を決めるとき成立する。
(繰り返しになるが、以上の説明は間違っているかもしれないので、鵜呑みにしないでください。)
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