人手不足対策の空騒ぎ

「人手不足」という言葉を見聞きすることが多くなった。対策として、女性、高齢者の活用が唱えられ、外国人労働者の受け入れなどが取りざたされている。本当に人手不足か?そのような対策が有効なのか?疑問に思うことが多い。 人手不足の象徴のように言われるのが、チェーン経営の外食産業と建設業だ。外食産業で不足しているのはパートアルバイトで、建設業では熟練労働者が不足しているといわれる。 外食産業の雇用はかなり急速に拡大しているので、絶対的な供給不足というわけではなさそうだ。この産業で不足しているのは、低賃金労働者だ。外食産業の時給は、大体、高卒初任給を所定労働時間で割った額に近い。つまり、高校を出て何年もたって、大学や専門学校をを出たり、社会人として仕事の経験を積んだ人間を、賃金は新規高卒並み、ただしボーナスはなし、という条件で集めるのが難しくなっているのだ。これを人手不足と呼ぶべきだろうか?このような労働条件でも簡単に人が集まるというのは、深刻な仕事不足だったからだ。現状は、仕事不足が解消してきたととらえるのが正確ではないか?景気が回復すれば、このような現象が起こるのが当たり前で、国民の負担で対策などを打つ必要はない。それとも、30にもなった人間が高卒初任給並み賃金で働くのが当たり前という社会を作るのだろうか?誰がそんなことを望んでいるのだろう。 建設産業での人手不足は性格が違う。こちらはそれなりの賃金が支払われる熟練労働者が不足しているのだ。原因は簡単で、長期にわたる不況のせいで人材養成が行われて来なかったところに、突然需要が増えたということに尽きる。もう少し需要を安定させておけば、これほどの不足にはなっていなかっただろう。それぞれの職場で人材養成は始っている。仕事をすること自体が人材の養成なのだから。訓練校を作ったり、人手を節約するような技術の開発も進んでいる。仕事ができて人手不足になったから人材養成が進むのだ。需要を安定させ、人手不足の状態を保つことこそ人手不足対策なのだ。打ち上げ花火のような緊急対策、即効性のある施策はとる必要がない。 当たり前のことだが、景気循環の波を穏やかなものにすること、長期的に需要を安定させること、労働市場を安定させることを経済運営の目標とし、成功すれば人手不足をはじめ多くの問題を解決できるのだ。空騒ぎはやめよう。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング