雇用の動きを見ると、常用雇用全体では7月、8月と同じ1.7%増加です。内訳をみると一般労働者は1.1%増加で、パートタイム労働者は2.9%増加です。8月と比べるとフルタイム労働者の増加率が小さく、パートタイム労働者の増加率は大きくなりました。全体の増加率は変わらず、フルタイムの伸びが続いているとはいえ、伸び率の傾向的な高まりはストップしたといえるでしょう。拡張ペースはわずかながらスローダウンしているのかもしれません。パートタイム労働者の増加率のほうが高いので、パートタイム労働者の割合は高まり続けています。
常用雇用の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 1.4
| 0.6 | 3.3 |
5月 | 1.4 | 0.7 | 3.1 |
6月 | 1.5 | 1.0 | 2.8 |
7月 | 1.7 | 1.1 | 3.0 |
8月 | 1.7 | 1.3 | 2.4 |
9月 | 1.7 | 1.1 | 2.9 |
労働時間には特殊事情があります。2013年の9月には日曜日が5回あったのですが、2014年は4回でした。その分平日が増えています(土曜日は4回で変わりなし)。平日に比べて日曜日は働く人が少なく、おそらく時間も短いので、その影響が出ています。フルタイム労働者の出勤日数は0.2日増えています。
総実労働時間は、全体では0.5%増加です。フルタイムは0.8%ですが、パートタイムは0.2%減っています。
総実労働時間の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | △0.7 | △0.2 | △0.4 |
5月 | △0.8 | △0.4 | △0.8 |
6月 | 0.5 | 1.0 | △0.1 |
7月 | 0.7 | 1.0 | △0.2 |
8月 | △1.6 | △1.5 | △1.9 |
9月 | 0.5 | 0.8 | △0.2 |
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えると次のようになります。これで基調を見るのは無理があります。
総労働投入の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 0.7 | 0.4 | 2.9 |
5月 | 0.6 | 0.3 | 2.3 |
6月 | 2.0 | 2.0 | 2.7 |
7月 | 2.4 | 2.1 | 2.8 |
8月 | 0.1 | △0.2 | 0.5 |
9月 | 2.2 | 1.9 | 2.7 |
これに対して
名目賃金の動きです。
現金給与総額はフルタイム、パートタイムともに増えています。
名目賃金の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 0.7 | 1.2 | 0.9 |
5月 | 0.6 | 1.0 | 0.8 |
6月 | 1.0 | 1.5 | 0.7 |
7月 | 2.4 | 3.0 | 1.0 |
8月 | 0.9 | 1.3 | 0.6 |
9月 | 0.7 | 1.1 | 0.5 |
所定内給与を見ると、全体では0.4%、フルタイム労働者では0.8%、パートタイム労働者では0.3%の増加です。フルタイム労働者の雇用が増えている中での所定内給与の増加ですから、平均賃金の伸び率が低くてもそれほど悪いものでないでしょう。また、パートタイム労働者の所定内労働時間は0.4%減っていますので、1時間当たりに直すと0.7%の上昇です。増えていますが、増加率は1%を割りました。好天が続いていたパートタイム
労働市場に陰りが見られます。
少し気になるのがフルタイム労働者の所定外労働時間の伸びが2.2%にとどまっていることです。常用雇用が増えたノアですから減ってもいいのですが、どうも気になります。
では、名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると次のようになります。やはり近似計算です。基調としては2%台の伸びが続いているといえるでしょう。
雇用者所得の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 2.1 | 1.8 | 4.2 |
5月 | 2.0 | 1.7 | 3.9 |
6月 | 2.5 | 2.5 | 3.5 |
7月 | 4.1 | 4.1 | 4.0 |
8月 | 2.6 | 2.6 | 1.8 |
9月 | 2.4 | 2.2 | 3.4 |
名目は悪くはないのですが、問題は
消費者物価が
総合で3.2%、
持ち家の帰属家賃を除く総合では4.0%も上昇していることです。2か月連続で実質ではマイナスに戻ってしまいました。
「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2014年8月確報)」でつぎのとおり書きました。
消費の動向が問題です。雇用者報酬が実質マイナスでも、これは一時的なもので2015年4月以降はプラスに転じると家計が予想するか、雇用の安定が家計の将来見通しを明るくしたりして、消費が拡大するという可能性はあります。しかし、流動性制約のもとにある金融資産が少ない世帯では現在の収入が現在の消費を制約します。また、10月以降の消費税の引き上げも意識されているかもしれません。
雇用者報酬が名目2%台の成長を続けるなら、2015年の消費税の引き上げ幅は1%に抑え、2016年10月に再度1%引き上げるのが妥当でしょう。2014年度の税収は予算の想定をかなり上回りそうなので、それでも予定通り財政再建は進むはずです。無理はやめましょう。
私の意見は変わっていません。単純な先送りということで2ポイント一挙に引き上げるのは危険です。2回に分けましょう。
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