発表からかなり時間がたってしまいました。
雇用の動きを見ると、常用雇用全体では7月と同じ1.7%増加です。内訳をみると一般労働者は1.3%増加、パートタイム労働者は2.4%増加です。全体の増加率は変わっていませんが、フルタイムが伸びが続いています。伸び率は傾向的に高まってきており、いい動きです。パートタイム労働者の増加率は緩やかに低下しているように見えますが、まだはっきりとしたことは言えません。パートタイム労働者の増加率のほうが高いので、パートタイム労働者の割合が高まり続けていることに変わりはありません。
常用雇用の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 1.4
| 0.6 | 3.3 |
5月 | 1.4 | 0.7 | 3.1 |
6月 | 1.5 | 1.0 | 2.8 |
7月 | 1.7 | 1.1 | 3.0 |
8月 | 1.7 | 1.3 | 2.4 |
労働時間には特殊事情があります。2013年の8月には日曜日が4回あったのですが、2014年は5回でした。その分平日が減っています。平日に比べて日曜日は働く人が少なく、おそらく時間も短いので、その影響が出ています。
総実労働時間は、全体では△1.6%です。フルタイムは△1.5%、パートタイムは△1.9%です。
総実労働時間の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | △0.7 | △0.2 | △0.4 |
5月 | △0.8 | △0.4 | △0.8 |
6月 | 0.5 | 1.0 | △0.1 |
7月 | 0.7 | 1.0 | △0.2 |
8月 | △1.6 | △1.5 | △1.9 |
ついでですが、9月は逆になります。2013年には日曜日が5回、2014年には4回でした。
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えると次のようになります。これで基調を見るのは無理があります。
総労働投入の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 0.7 | 0.4 | 2.9 |
5月 | 0.6 | 0.3 | 2.3 |
6月 | 2.0 | 2.0 | 2.7 |
7月 | 2.4 | 2.1 | 2.8 |
8月 | 0.1 | △0.2 | 0.5 |
雇用は、堅調に伸びているし、質の面でも悪くはありません。
これに対して
名目賃金の動きです。
現金給与総額はフルタイム、パートタイムともに増えています。
名目賃金の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 0.7 | 1.2 | 0.9 |
5月 | 0.6 | 1.0 | 0.8 |
6月 | 1.0 | 1.5 | 0.7 |
7月 | 2.4 | 3.0 | 1.0 |
8月 | 0.9 | 1.3 | 0.6 |
8月は特別給与がほとんどありませんので、この影響は小さくなります。6月、7月の増加は特別給与の増加によるところが大きかったので、その分がなくなった8月は伸び率が低くなりました。所定内給与を見ると、全体では0.2%、フルタイム労働者では0.5%、パートタイム労働者では△0.6%です。フルタイム労働者の雇用が増えている中での所定内給与の増加ですから、平均賃金の伸び率が低くてもそれほど悪いものでないでしょう。また、パートタイム労働者の所定内労働時間は2.0%減っていますので、1時間当たりに直すと1.4%の上昇です。悪くはありません。
では、名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると次のようになります。やはり近似計算です。基調としては2%台の伸びが続いているといえるでしょう。
雇用者所得の増加率(%)規模 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 2.1 | 1.8 | 4.2 |
5月 | 2.0 | 1.7 | 3.9 |
6月 | 2.5 | 2.5 | 3.5 |
7月 | 4.1 | 4.1 | 4.0 |
8月 | 2.6 | 2.6 | 1.8 |
名目は悪くはないのですが、問題は
消費者物価が
総合で3.3%、
持ち家の帰属家賃を除く総合では4.0%も上昇していることです。
「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2014年7月確報) その2」で、「雇用者所得を総合で割れば実質プラスですが、これは特別給与の伸びの効果です。8月には消えるでしょう。」と書いたのですが、その通り実質ではマイナスに戻ってしまいました。
消費の動向が問題です。雇用者報酬が実質マイナスでも、これは一時的なもので2015年4月以降はプラスに転じると家計が予想するか、雇用の安定が家計の将来見通しを明るくしたりして、消費が拡大するという可能性はあります。しかし、
流動性制約のもとにある金融資産が少ない世帯では現在の収入が現在の消費を制約します。また、10月以降の消費税の引き上げも意識されているかもしれません。
雇用者報酬が名目2%台の成長を続けるなら、2015年の消費税の引き上げ幅は1%に抑え、2016年10月に再度1%引き上げるのが妥当でしょう。2014年度の税収は予算の想定をかなり上回りそうなので、それでも予定通り
財政再建は進むはずです。無理はやめましょう。
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