8月分の確報が発表になりました。
常用雇用は、全体では2.0%の増加です。15年に入ってから2%程度の伸びが続いてます。内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が0.9%であるのに対してパートタイム労働者の増加率は4.7%とかなり高くなっています。これは、珍しく、7月と全く同じです。
常用雇用の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
14年4月 | 1.4
| 0.6 | 3.3 |
5月 | 1.4 | 0.7 | 3.1 |
6月 | 1.5 | 1.0 | 2.8 |
7月 | 1.7 | 1.1 | 3.0 |
8月 | 1.7 | 1.3 | 2.4 |
9月 | 1.7 | 1.1 | 2.9 |
10月 | 1.6 | 1.0 | 2.8 |
11月 | 1.6 | 1.1 | 2.8 |
15年1月 | 2.0 | 1.1 | 3.9 |
2月 | 2.1 | 0.8 | 4.9 |
3月 | 1.9 | 0.6 | 4.6 |
4月 | 2.0 | 1.3 | 3.8 |
5月 | 2.0 | 1.4 | 3.5 |
6月 | 2.1 | 1.1 | 4.4 |
7月 | 2.0 | 0.9 | 4.7 |
8月 | 2.0 | 0.9 | 4.7 |
総実労働時間は、常用労働者全体では0.3%の増加に転じました。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.7%増加、パートタイム労働者は0.2%の減少です。7月に短くなっていたフルタイム労働者の
所定外労働時間は引き続き0.5%短くなっています。パートタイムの
所定内労働時間は6月、7月に引き続き0.3%減っています。出勤日数も0.1日減っています。パートタイム労働者の割合が高まっていますが、フルタイム労働者の総実労働時間が増えているので全体の総実労働時間も伸びています。
パートタイム労働者の人数は大幅に増えていますので、本当に短時間しか働かない労働者でも企業がえり好みせずに採用をしている可能性が高いと思われます。「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年7月分確報)」でも書きましたが、これによって、就業経験がない、あるいはアルバイト程度しかないという理由で採用してもらえなかった30歳代、40歳代の男性がパートタイム労働であっても仕事に就けるようになるといいのですが。ある程度長く勤めれば、仕事ができることを示すことができます。
総実労働時間の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
14年4月 | △0.7 | △0.2 | △0.4 |
5月 | △0.8 | △0.4 | △0.8 |
6月 | 0.5 | 1.0 | △0.1 |
7月 | 0.7 | 1.0 | △0.2 |
8月 | △1.6 | △1.5 | △1.9 |
9月 | 0.5 | 0.8 | △0.2 |
10月 | 0.5 | 1.2 | △1.4 |
11月 | △2.7 | △2.7 | △2.0 |
12月 | △1.1 | △0.7 | △1.7 |
15年1月 | 0.0 | 0.4 | △1.0 |
2月 | △0.2 | 0.5 | △0.5 |
3月 | 1.5 | 2.3 | △0.3 |
4月 | 1.2 | 1.5 | △0.2 | 5月 | △2.7 | △2.9 | △1.8 |
6月 | △0.1 | 0.4 | △1.2 |
7月 | △0.3 | 0.4 | △1.1 |
8月 | 0.3 | 0.7 | △0.2 |
常用雇用の増加率と
総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、
労働投入を考えます。労働投入は7月より増加率が高くなり2.3%増加しています。増加の基調に変化はないようです。
総労働投入の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
14年4月 | 0.7 | 0.4 | 2.9 |
5月 | 0.6 | 0.3 | 2.3 |
6月 | 2.0 | 2.0 | 2.7 |
7月 | 2.4 | 2.1 | 2.8 |
8月 | 0.1 | △0.2 | 0.5 |
9月 | 2.2 | 1.9 | 2.7 |
10月 | 2.1 | 2.2 | 1.4 |
11月 | △1.1 | △1.6 | △0.8 |
12月 | 0.6 | 0.5 | 1.1 |
15年1月 | 2.0 | 1.5 | 2.9 |
2月 | 1.9 | 1.3 | 4.4 |
3月 | 3.4 | 2.9 | 4.6 |
4月 | 3.2 | 2.8 | 3.6 |
5月 | △0.7 | △1.5 | 1.7 |
6月 | 2.0 | 1.5 | 3.2 |
7月 | 1.7 | 1.3 | 3.6 |
8月 | 2.3 | 1.6 | 4.5 |
これに対して名目で見たひとり当たりの平均賃金の動きです。
現金給与総額は、常用労働者全体では0.4%増加しています。フルタイム労働者は、0.7%の増加、パートタイム労働者はそれを上回る1.7%の増加です。
パートタイムの
所定内給与は1.4%の増加、
所定内労働時間は0.3%の短縮ですから、1時間当たりの所定内給与では1.7%の大幅な上昇です。実質で見ても1.4%の上昇です。賃金率が上がり雇用が増えているのですから、パートタイム
労働市場の需給はタイト化しています。しかし、雇用は高い割合で増加し続けているので供給源が枯渇している訳ではありません。
フルタイム労働者の
所定内給与は0.4%の増加、
所定外給与も2.0%増えています。順調です。6月に大幅に減った
特別給与は7月と同じ2.7%の増加です。
名目賃金の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
14年4月 | 0.7 | 1.2 | 0.9 |
5月 | 0.6 | 1.0 | 0.8 |
6月 | 1.0 | 1.5 | 0.7 |
7月 | 2.4 | 3.0 | 1.0 |
8月 | 0.9 | 1.3 | 0.6 |
9月 | 0.7 | 1.1 | 0.5 |
10月 | 0.2 | 0.6 | 0.2 |
11月 | 0.1 | 0.7 | △1.1 |
12月 | 1.3 | 1.8 | △0.4 |
15年1月 | 0.6 | 0.9 | 0.3 |
2月 | 0.1 | 0.6 | 0.8 |
3月 | 0.0 | 0.6 | 0.6 |
4月 | 0.7 | 0.9 | 1.3 |
5月 | 0.7 | 1.1 | △0.6 |
6月 | △2.5 | △2.2 | △0.5 |
7月 | 0.9(0.5%) | 1.3(1.0%) | 0.7(0.4%) |
8月 | 0.4(0.2%) | 0.7(0.4%) | 1.7(1.4%) |
( )内は
消費者物価指数の
帰属家賃を除く総合で実質化したもの。8月の指数は7月と同じ0.3%の上昇でした。8月も同じ上昇率です。
雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では名目では2.4%と大幅な増加です。フルタイム労働者は1.6%の増加、パートタイム労働者は6.4%の大幅増加です。
帰属家賃を除く総合の
消費者物価指数は0.3%の上昇でしたので、全体は実質でも2.1%と大幅な増加です。スーパーやコンビニの売り上げが増えていますが、平仄はあっています。
雇用者所得の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
4月 | 2.1 | 1.8 | 4.2 |
5月 | 2.0 | 1.7 | 3.9 |
6月 | 2.5 | 2.5 | 3.5 |
7月 | 4.1 | 4.1 | 4.0 |
8月 | 2.6 | 2.6 | 1.8 |
9月 | 2.4 | 2.2 | 3.4 |
10月 | 1.8 | 1.6 | 3.0 |
11月 | 1.7 | 1.8 | 1.7 |
12月 | 3.0 | 3.0 | 2.4 |
15年1月 | 2.6 | 2.0 | 4.2 |
2月 | 2.2 | 1.4 | 5.7 |
3月 | 1.9(△0.8) | 1.2 | 5.2 |
4月 | 2.7( 1.9) | 2.2 | 5.1 |
5月 | 2.7( 2.0) | 2.5 | 2.9 |
6月 | △0.4(△0.9) | △1.1 | 3.9 |
7月 | 2.9(2.6) | 2.2 | 5.4 |
8月 | 2.4(2.1) | 1.6 | 6.4 |
( )内は
消費者物価指数の
帰属家賃を除く総合で実質化したもの。
なお、消費税率引き上げ前の2013年と比較してみると、8月の現金給与総額の実質賃金指数は84.7から81.9へ低下しているが、常用雇用指数は102.5から106.3へ上昇しており、これを掛け合わせた指数を試算すると、86.8から87.1へ0.2%上昇している。この値はずっとマイナスが続き、6月には3.1%のマイナスであったが、7月は2.1%の上昇に転じている。ボーナスの影響をあまり受けない8月ということを考えると、一応、消費税率引き上げの悪影響からは抜け出ることができたのかもしれない。9月に注目である。
基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。消費も安定した伸びを続けるだろうと考えています。
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