人手不足(?)の原因を見極めよう

この題は、9月3日の日経新聞の社説の題と同じです。ただ、(?)を付け加えてあります。この社説は、とても興味深いものです。 この社説では、人手不足の原因としてまず、「今の人手不足の原因の一つは経済のサービス化に雇用構造が追いついていないことだ。」と主張します。根拠として挙げているのは、介護の仕事の有効求人倍率が2.57倍、接客・給仕が3.02倍など、サービス分野で人材需給の逼迫が目立つことを挙げています。変な話です。介護や給仕・接客の仕事は低賃金です。不足しているのはサービスの業務に従事する人材ではなく、低賃金労働者でしょう。これを「経済のサービス化に雇用構造が追いついていない」ととらえるのは変です。 介護については、サービス需給がひっ迫しているにもかかわらず、介護報酬が抑制され、結果として賃金も抑制され、必要な労働者が集まらないことにあります。高齢者の増加→介護ニーズの増加→介護労働ニーズの持続的な増加という構造変化に賃金構造の変化が追いついていないのです。その原因をさらに追及すれば、税金や社会保険料の負担、自己負担を負いたくないという国民の意識があります。見極めるというならそこまで書いてほしかったと思います。 このような負担を負わずにサービス化に応じた雇用構造の変化をもたらすこともできないわけではありません。政府の支出を抑制し、金利を引き上げ、豊富な外貨準備を活用してドル売り、円買い介入を実施し、経済を不況にもっていけばいいのです。低賃金でも働かざるを得ない労働者が増え、当面のこと、10年ぐらいの中期を見込めば人手不足は解消します。ただ、低賃金労働者だらけになると、結婚する人、子供を作る人が減り、長期的には人口が減り、好況期には人手不足が再現することになるかもしれません。その時はもう一度不況にするようにすればいいでしょう。永続不況こそ人手不足解消の根本療法です。 もう一つの理由として、「技能を持った人材の供給が足りていないことが人手不足の根にあるという見方もできる」とあります。この原因は、企業が長期にわたり採用を抑制し、人材の育成を怠ってきたことにあります。社説は、この根本的な問題から目を背けているようです。人手不足の原因を見極めているとは言えません。 人手不足の対策として 1 人手に頼らないビジネスモデルへの転換 2 付加価値の引き上げ、一人当たりの生産性の向上 3 IT技術の活用 4 公共訓練へのバウチャー制度の導入 5 高齢者や女性の就業促進 6 外国人労働者の受け入れ拡大 が挙げられていますが、4を除けば賃金が上昇していけば自然に行われていくことで、政府が何かをする必要はないでしょう。ただ、低賃金の成長分野に労働力を移そうとするのはやめたほうがいいと思います。実現しても誰も幸せになりません。不況にならない限り実現可能性もありません。 「人手不足対策の空騒ぎ」はやめてほしいです。 人気blogランキングでは「社会科学」の16位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング