児童手当 その6

 今日は、企業の外への影響を考えてみたいと思います。

 

 ひとつは生活水準の格差の問題です。子供のいる世帯とそうでない世帯との比較は、「児童手当 その2」でやりましたので、子のいる世帯同士の比較です。

 世帯主、男性という意味ではなくその世帯でもっとも所得の多い人という意味です、が非正規労働者である場合と正社員である場合を比較すると、非正規労働者のほうが賃金による所得が低いのが普通です。例えば15万円と30万円であれば、1対2です。仮に子が一人なら、児童手当4万円とすると、19万円と34万円になりますから、約1対1.8になり、格差は縮小します。

 非正規、正規の格差でなくとも、小企業、大企業の格差でも同じ結果になります。

 一般的には格差は縮小すると考えていいでしょう。

 やや、細かい話ですが、社会福祉制度のひとつである生活保護との関連を取り上げます。というのは福祉から労働へ、という流れと関係しているのと、児童手当の財源に影響があるからです。

このところ生活保護を受ける世帯の数、人数は増加を続けています。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/gyousei/03/kekka1.html

生活保護を受ける世帯のうち、世帯主が働いているのは9.5%、世帯主は働いていないが、世帯員が働いているのは2.4%、誰も働いていないのが88.1%です。

http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/data15k/3-06.xls

 そもそも生活保護を受けるようになるのは、病気や怪我で働けなくなったり、高齢で仕事ができなくなったりするからで、働いている人が少ないのは当然です。

 しかし、中には働ける人もいます。しかし、働いて収入を得ると保護費は同じ額だけ減ります。例えば、働いて10万円稼ぐと20万円が10万円に減ります。20万円以上稼がないと意味がないのです。20万円以上稼げる口を捜すのは大変です。すると働く意味が余りありません。ここで、児童手当が4万円支払われると、保護費が16万円に減ります。すると16万円以上稼げるなら働く意味が出てきます。手当てを導入することにより働くことの敷居が低くなるのです。この効果はあまり大きいものではないはずですが、制度の矛盾の解消という意味はあります。多分母子世帯には有効だと思います。

 

 財源に関しては、保護を受けている世帯にはおそらく15万人程度は18歳未満の子がいると思われます。手当てを導入すれば720億円程度保護費を減らせる計算です。財源としては大きなものではありませんが。

 なお、この手当てでまかなえる範囲であれば、保護世帯の子が高校へ進学するのを認めるべきでしょう。

 最後に一言。今日(2005・1・15)の日本経済新聞の「春秋」で「統計や学者の分析ばかり読んでいては少子化問題の解は見えない。」と断定されています。このシリーズなど統計や分析の羅列に過ぎないので真っ先に批判されそうです。しかし、統計ばかりではだめだとおっしゃるのはごもっともですが、統計や理論なしに解が見つかるとも思えません。