児童手当 その8

 そろそろ、このテーマも終わりにする時期が来たような気がします。

 今日は経済への影響、社会への影響、家庭への影響を考えます。

 まず、経済から。児童手当の導入が、経済格差の縮小につながるだろうこと、パートタイム労働者の賃金、女性の賃金の上昇につながるだろうことは既に書きました。

 では、経済全体にはどのような影響を与えるでしょうか。

 

ひとつは消費が拡大するだろうと予測できます。基本的には児童手当を受ける世帯が受け取る額と消費税で吸い上げられる額は等しいでしょう。消費税を多く払うのは、多額の消費を行う世帯です。厳密な議論をしだすときりがないのですが、どちらかといえばゆとりのある世帯です。ゆとりのある世帯は、消費を抑制するでしょうが、手当てを受けた世帯は消費を増やします。ゆとりがあって貯蓄しやすい世帯から、ゆとりがなくて消費しやすい世帯にお金を回すので、消費が増えるのが自然です。

 ついでに言うとよく売れるようになるのは、子供関係の商品と、子供のために親が我慢していた商品です。前者は大体想像がつくのですが、後者は何でしょう。年1回の温泉旅行でしょうか。ひょっとするとお父さんのスーツでしょうか。

 もうひとつ、消費税引き上げ前には駆け込み購入があるでしょう。一過性のものですし、後で買い控えが待っているので、売る側から見れば、そう歓迎できるものではないかもしれません。

 次に、社会への影響です。

 多分、あくまで多分ですが、女性の間の私は損してる、あの人は得してるといった感情が少し緩和されるでしょう。育児をする側の不満がだいぶ減るような気がします。また、子供を生まない女性も社会全体の子育て費用を受け持つことになるので、気楽になるという面がるのではないでしょうか。ここらはあまり自信がありません。女の勝ち負けといったことにとらわれない穏やかな空気ができればいいと思います。子供を持たない女性からの支持があると導入しやすいのですが、どうでしょう。

 まったく別な面ですが、この制度を導入すると非常に大きな金額が政府の手を通っていくことになります。官僚が威張る社会になるでしょうか。そうはならないでしょう。徴収も機械的、支出も子供がいるかどうかで機械的に決まる単純な制度ですから、道路をどこに作るか、誰に発注するかといったような役人の裁量に任される部分がありません。政治家にとっても全然うまみのない制度です。

 これまたついでですが、この制度で、いろいろ細かな配慮はしないほうがいいでしょう。複雑にすればするほど、行政コストが高くなりますから。それに単純な制度のほうが納得を得やすいのです。

 最後に家庭での影響です。

 もし、もしもですが、育児をする側が妻なら、この手当ては事実上妻の収入という意味合いを持ちます。専業主婦も自分が育児をしているから手当てが出る、手当てを稼いでいるのは私だ、ということが言える訳です。これはなかなかいいのではないでしょうか。手当てで余裕ができれば、家庭の空気も明るくなるのではないかと思います。

 以上です。長時間お付き合いいただいて、ありがとうございました。