「2006年福祉宇宙の旅 その6」について

2006年福祉宇宙の旅 その6」に、政治学者の卵さんから、こんなコメントをいただいていました。

高齢者の無年金で生活保護を受給している世帯の多さを考えると,基礎年金は消費税でもなんでも財源にして自動的にあげたほうが安い気もしますね(というか,完全にモラルハザード状態ですし).役所の審査担当者の人件費も馬鹿にならないでしょうし.」

これに「まあ、その財源探しが大変です。消費税を上げる気配も見せなかったのが、小泉総理の高い支持率に繋がっていたのだと思います。これからの人がそれをやれるかどうか」とお返事したところ、さらに、こういうコメントをいただきました。

「財源探しとは言っても,高齢者や傷病者,障害者の貧困層に対しては今までも税金から生活保護で面倒を見ていたわけですから,これを基礎年金という形で支払うことになってもそれほど財政負担は変わらないような気もしますが.上にも書きましたけど役所の担当者の仕事量も半分以下で済みますので,人件費を考えたらむしろ節約できる可能性も.

あと基礎年金の税方式化ですが,国民年金保険料がなくなる分の負担減とのチャラではだめでしょうかね.少なくとも消費税で保険料を代替するとなると,現役世代の負担は軽減されることになりますし(高齢者も消費税は負担するので).また使用者の社会保険料負担が多少軽減されるので,正社員の雇用にも好影響があるのではないかと思います.ただ有権者心理的には同額でもあっても保険料の軽減よりも増税額に大きく影響される傾向があるようなのですが.」

そして、「問題が複雑なので、少し考えてお返事します。」とお返事していました。

で、お返事をしたいと思います。

1 消費税を財源とする基礎年金制度への政治的支持

基礎年金という限り、一定年齢以上の高齢者に、所得に関わらず給付することになります。これを消費税で賄えば、税金を財源に高齢期に所得の高い人にも給付を行うことになります。現に働いていて、所得が低い人がこういう制度を支持するでしょうか?

例えば、年収300万円、消費も300万の人が15万円を豊かな高齢者のために、文句を言わず、あるいは文句を言いつつ支払い続けるでしょうか?うーん、よく分かりません。そんな年金止めてしまえという声が挙がりそうな気がします。

社会保険制度の場合、同じ保険料を納めた人が同じ給付を受けるので、所得に関わらず一定の保険料負担を求めても、納得が得やすいと思うのですが、税金の場合にはどんなものでしょうか?国民の心理がどう動くか、簡単には判断できません。

2 財政負担

基礎年金で生活扶助補費はかなりカバーできるでしょうが、住宅などの費用までは賄えないと思います。つまり、基礎年金の額が生活保護より低いので、基礎年金が支払われていれば生活保護を与えなくても済むとは言えません。減額はできますが。依然として審査は必要なので、審査する人の人件費もあまり減らせないのではないかと思います。ここらデータがないので何とも言えません。

生活保護世帯の高齢者の数と基礎年金の受給者の数を比べると、問題にならないくらい後者の方が多いです。1百万人対25百万人(http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/zaisei/04/04-09f.htmlをみて、一番下のNEXTをクリックしてください。)。もし基礎年金をすべて税金で見ることにしたら、税負担は9兆円位増えると思います(http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/zaisei/04/04-04f.html)。

税金でという案に必ずしも反対ではありませんが、一旦税金の負担にしたら、支給額を減らすか、対象を狭めて税負担を減らしたいという圧力に耐えられるようにしなければならないと思います。

歯切れの悪い回答ですいません。

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