「引退した戦士たちと世代間格差」に思う その2

「引退した戦士たちと世代間格差」に思う その1」では、カトー氏に対する反対論を書きましたが、カトー氏は、識見のある方で、今回のご意見にも大いに賛成できるところがあります。ただ、ご提案については少し無理があると思われるところがあり、対案を提示したいと感じます。

そこで、今回は、カトー氏に賛成である部分と、ご提案に対する対案の提示をしようと思います。

次のご意見には賛成です。

少子高齢化とともに若年世代の負担はますます重くなるばかりだ。」

「必要なのは年金制度を持続可能なものにする改革だ。」

「デフレによる失業率の上昇で現在の若者たちには戦う機会も与えられていない。」

「次の総選挙では(中略)デフレからの完全脱却を政治家に要求してほしい。」

次のご提案に対しては、対案を提示したいと思います。

「世代内の問題は世代内所得再配分で解決すべきだ。」

「解決策は老年世代の自立、若年世代から老年世代への所得再配分をやめることだ。」

本質に迫るために、極めて単純化すると、世代間扶養方式の年金制度が持続可能なものであるためには、次のような関係が成立していることが必要です。

老齢の受給者の人数×一人当たり受給額=年金保険料(税)を支払う若い世代の人数×その一人当たり所得×年金保険料(税)率

さて、この関係を維持したうえで、受給者の一人当たり受給額をある程度に維持し、かつ、

金保険料(税)率を一定限度以下に抑えることができれば、この方式の年金制度は持続可能です。

そのための背策として考えられるのは、次の三つです。

1 老齢の受給者の数を減らす。

 具体的には支給開始年齢の引き上げです。これは高齢者の就業機会を確保すれば可能です。

2 年金保険料(税)を支払う若い世代の人数を増やす。

 少子化対策です。

3 年金保険料(税)を支払う若い世代の一人当たり所得を増やす。

 経済成長が根本的な対策です。「デフレによる失業率の上昇で現在の若者たちには戦う機会も与えられていない。」というような状況を続けてはなりません。「次の総選挙では(中略)デフレからの完全脱却を政治家に要求」すべきです。それが、年金の持続可能性を高めます。

 さて、kumakuma1967さんから「部分的に賛成」という次のようなご意見をいただきました。

でも、このシステムでは「同一世代内では次世代を育てる数が少ない人ほど有利」というインセンティブが強力に働く。*1

 「親子間の相互の扶養があること」をモラルの基準ととったとしても、このインセンティブの存在によって、本質的にインモラルと言えるのではないだろうか。

だから、私には、「現行制度は正義に反する。」と思える。

*1:子のない人でも納税等を通じて子育てはしてるんですが.....

「このシステムでは同一世代内では次世代を育てる数が少ない人ほど有利」というインセンティブが強力に働く。」というご指摘は、その通りだと思います。しかし、それは年金制度が不正義だからではありません。

世代間扶養の一方、つまり高齢者の扶養を私的なもの(仕送り)から公的なもの(年金制度)

に切り替えておきながら、もう一方の世代間扶養、子供の扶養、育児、教育を親の責任のまままにしていることが矛盾なのです。子供を将来の年金を支えてくれるものと正しく認識すれば、子育て支援の制度と年金制度は対になっているべきものです。

私は、今でも、2005年に「児童手当 その3」で書いたような、児童手当の拡大が最も望ましいと考えています。

これは、少子化対策であると同時に、子育てをしている年金保険料(税)を支払う若い世代の一人当たり所得を増やす政策です。また、子供の生活の質を高める政策でもあります。

つまり、私は「解決策は老年世代の自立、若年世代から老年世代への所得再配分をやめること」ではなく、子供世代、若年世代、老年世代の間で適切な所得再配分を行うことが解決策であると考えているのです。

対策はこんなイメージになります。

子供世代 親に対する児童手当の支給を通じて生活の質を高める。

子供のいない若年世代  雇用の確保

子供のいる若年世代   雇用の確保+児童手当の支給

老年世代          年金受給年齢になるまでの雇用の確保+老齢年金の支給

その負担はこうなります。

子供世代 なし。

子供のいない若年世代 税金+年金保険料(税)

子供のいる若年世代   税金+年金保険料(税)+子育て、教育

老年世代          税金

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