これまでは、よく、「専業主婦の世帯の妻は、保険料を払わなくてもいいのに年金がもらえるから、共稼ぎ世帯は損している。」と言われてきました。そうではないことは、「
3号被保険者制度は不公平か?」で説明しました。
「共稼ぎ世帯は損だ。」のニューヴァージョンは、共稼ぎ世帯のほうが現役時代の所得に比べて年金が少ない(
所得代替率が低い)から損だ。」というものです。マスコミでも取り上げられているようです。
現実の平均的な共稼ぎ世帯の
所得代替率が、専業主婦世帯より低いのは事実のようです。しかし、これは制度上そうなっているのではありません。
「
3号被保険者制度は不公平か?」で書いた次の三つの原則に従って、制度を作ると、所得が同じ世帯の年
金保険料は共稼ぎでも
専業主夫でも常に同じ、年
金保険料が同じなら年金も同じです。当然所得が同じなら、年金は同じです。
所得代替率に差ができるわけはありません。そして、所得が高いと
所得代替率は低くなります。これが制度上決まっていることです。
第1の原則 所得に応じて費用を負担する。
第2の原則 個人レベルでの負担に応じた給付と老後の所得格差の是正
○負担が同じなら給付も同じ。負担が少なかった人は、年金も少なく、多く負担した人には多めの年金を払う。これには異論がないでしょう。
●働いていたときの所得格差より、老後の年金の格差を小さくする。
第3の原則 二人合わせた所得が同じであった夫婦(第1の条件から二人合わせた支払った保険料が同じ夫婦です。)の年金額は、どの夫婦をとっても同じ。
では、なぜ、現実に差ができているのか。簡単です。現実の平均的な共稼ぎ世帯の所得が、専業主婦世帯の所得より多いからです。前回は、両方の世帯の所得が同じだという仮定のもとに年金額を計算しました。下の表です。この表で、「年金÷所得」とあるのが
所得代替率です。同じ所得なら差はできません。
所得が同じ場合の夫婦の比較夫婦のタイプ | 夫、妻 | 所得 | 保険料 | 年金 | 年金÷所得 |
---|
専業主婦の夫婦 | 夫(2号) | 200 | 40 | 90 | - |
専業主婦の夫婦 | 妻(3号) | 0 | 0 | 10 | - |
専業主婦の夫婦 | 夫婦合計 | 200 | 40 | 100 | 50% |
共稼ぎの夫婦 | 夫(2号) | 100 | 20 | 50 | - |
共稼ぎの夫婦 | 妻(2号) | 100 | 20 | 50 | - |
共稼ぎの夫婦 | 夫婦合計 | 200 | 40 | 100 | 50% |
しかし、共稼ぎ世帯のほうが所得が多いとこうなります。
所得に差がある場合の夫婦の比較夫婦のタイプ | 夫、妻 | 所得 | 保険料 | 年金 | 年金÷所得 |
---|
専業主婦の夫婦 | 夫(2号) | 200 | 40 | 90 | - |
専業主婦の夫婦 | 妻(3号) | 0 | 0 | 10 | - |
専業主婦の夫婦 | 夫婦合計 | 200 | 40 | 100 | 50% |
共稼ぎの夫婦 | 夫(2号) | 150 | 30 | 70 | - |
共稼ぎの夫婦 | 妻(2号) | 120 | 24 | 58 | - |
共稼ぎの夫婦 | 夫婦合計 | 270 | 54 | 128 | 47% |
所得の多い共稼ぎ夫婦の
所得代替率が低くなります。こういうことが起こるのは、第2の原則の「●働いていたときの所得格差より、老後の年金の格差を小さくする。」ことにしているからです。格差を是正しなくてよいなら、年金所得に保険料が正比例させ、保険料に年金を正比例させればよいのです。こうすれば、所得に対する年金の割合は常に一定です。つまり
所得代替率は常に一定です。
3号被保険者の問題と同じように、働いているときの給料の格差を老後の年金にもそのまま格差として持ち込まないようにするのか、持ち込んでいいのかという問題なのです。
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