児童手当 その5

 今日(2005.1.13)の日本経済新聞の朝刊に自民、民主、公明の児童手当に対する姿勢の解説が載っていました。自民は慎重。公明は2,000億円ほどを投入して現在小学校3年までのものを6年生まで延長。財源は育児保険。民主党は3兆円を投入して、義務教育終了まで延長。財源は配偶者控除などの廃止による税収増。

 民主党は、影の内閣で討議中だそうですから最終案ではないのでしょうが、岡田ビジョンに比べるとかなり後退です。消費税引き上げを言い出すのはやはり怖いということでしょうか。

 しかし、果たしてこのような案で少子化がとまるのでしょうか。小額の手当てであっても子育ての負担軽減につながるのは確かです。しかし、出生率の回復につながるほどのインパクトを持つためにはかなりの額でなければならないと思います。

 試みに、平成15年の中絶の状況を調べてみました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/03/kekka4.html

 総数は、319,831件。この年の出生数が1,123,610人ですから、出生一人につき0.28件の割合です。

 このうち、母親が18歳から34歳までの232,793件です。中絶するにはそれなりの理由があるわけですが、それにしても大きな数です。ちなみにこの18歳から34歳までの女性が中絶せずに出産していれば、それだけで合計特殊出生率は0.28ポイント上昇します。実績が1.29でしたから1.57になっていた計算になります。今回の年金再計算の前提は、2050年に1.39に回復することです。

 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/kaikaku/04kaisei/dl/38.pdf

この年代で中絶が3分の1だけ減れば、すぐにでもこの水準に回復する訳です。

 この女性たちは妊娠するところまできているのですから、出産に一番近い人たちです。各政党が提案しているような案で、これらの女性が中絶を思いとどまるでしょうか。もっと高額、長期の手当てでないと効果がないように思います。

 三砂ちづるさんが、「オニババ化する女たち」(光文社新書)の中で児童手当とパートなどで得る収入がフルタイムの労働で得られる収入に匹敵しないと誰も子供を生まないだろうと述べていらっしゃいます。そこまでの必要はないのではないかと思いますが、せめて岡田ビジョンぐらいは必要でしょう。

 なお、本気で少子化対策の手段として児童手当を使うなら、母親が22歳までは、もっと高い手当にするのがいいでしょう。中絶高いのは18歳から24歳までですから。これぐらいの年齢だと働いた場合に得られる所得もあまり高くないので、手当が10万円ぐらいなら出産を選ぶ率はかなり高くなると思います。

 なお、財源についてですが、児童手当の充実によって、働くのをやめる女性が増えれば、保育園がかなり空きますので、費用は削減できます。これを当てることもできます。働くのを選ぶ女性にとっても、保育園に余裕ができるのはいいことではないでしょうか。