雇用と賃金を考える(2013年11月・パートタイム労働者)

パートタイム労働者の賃金を賃金を見ると、現金給与総額は0.3%、所定内給与も0.7%のマイナスです。同時に所定内労働時間も1.6%のマイナスですので、1時間当たり所定内給与は、逆に0.9%上昇しています。

最近、マスコミでも飲食店などの時給が上がってきたといった報道が目に付き始めましたが、賃金は上がっているとみるほうが正確だと思います。

最近気になるのが、いわゆる時給の動きです。これが上がる条件は労働市場のタイト化です。パートタイム労働者が増えていても、フルタイム労働者が減っていれば、フルタイム労働者であった人が、あるいはその配偶者がパートタイム労働者として働き始めた結果であれば、タイト化したとはいえず、時給の上昇は、あるとしても緩やかでしょう。2013年の場合、7月、8月は1時間当たり所定内給与の上昇率が0.2%、0.3%だったのですが、9月は0.8%、10月は0.4%でした。はっきりしないのですが、フルタイム労働者の雇用が増えだしたことが、今後、パートタイム労働者の時給に影響してくるかもしれません。

雇用は、相変わらず高い伸びです。3.5%で、この増加は2013年ですと2月の3.7%に次ぐ高さです。すでに常用労働者全体でも、パートタイム労働者でも雇用の水準は過去最高になっているので、この増加がいつまで続くのかが気になります。

なお、「雇用と賃金を考える(2013年11月・フルタイム労働者)」で書いた通りフルタイム雇用も0.2%増加していますが、パートタイム雇用の伸びのほうが高いので、パートタイム労働者の割合は29.74%まで高まっています。この結果、常用労働者全体の賃金は押し下げられています。

ラスカルさんが「物価と給与の推移 2013年11月までのデータによる更新」で「今後は、労働市場のタイト化が、パートなど非正規雇用労働市場や高卒新卒市場などで実際に起きている中、雇用の「量」の改善から雇用の「質」の改善への動きが順調に進むかどうかが景気動向を占う上での重要なポイントとなる。」というご意見を述べられています。その通りだと思います。私は、質の改善には二つのものがあると考えています。一つはフルタイム雇用の拡大です。二つ目は、賃金の上昇です。11月はフルタイムの雇用も増え、フルタイムの所定内給与も上昇し、パートタイム労働者の1時間あたり所定内給与も上昇したので、質の改善はある程度進んだといえましょう。

さらに改善が進むためには、もっとタイト化が必要です。そこで、パートタイム労働者の供給がいつまで増え続けるのかが気になるのは、そのためです。

これを考えるときには、単純に雇用者数だけではなく、労働時間も考える必要があります。11月の場合、雇用は3.5%増えましたが、総実労働時間は1.3%減っています足し算すると2.3%労働投入量が増えたことになります。これに対して、賃金総額は0.3%減少し、総実労働時間の減少を考えると、1時間当たり現金給与総額は1.0%の上昇です。すると労働供給の賃金に対する弾力性(パートタイム労働者の賃金が1%上がったときに労働供給がどれだけ増えるかを表します。)は、2.3ということになります。2012年の11月でもこの値は2.3でした。パートタイム労働市場は、まだ、この弾力性が変化するほどの状況にはなっていないということでしょう。労働市場が本当にタイト化すれば、この弾力性が小さくなるはずです。たとえば、フルタイム雇用が増加し、パートタイム労働からそちらへ移る人が増えると、弾力性は上昇するはずです。

これをもとに考えると、1時間当たり賃金が1%増加すると、労働供給は2.3%増え、総実労働時間が1.0%減ると仮定すれば、雇用は3.3%増えることになります。1時間当たり賃金が2%増加とすれば、労働供給は4.6%増え、雇用は5.6%増えることになります。雇用がどれぐらい増えれば、弾力性に変化がみられるのjでしょうか?

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