雇用と賃金を考える(2014年4月・常用労働者)

毎月勤労統計の2014年4月確報が発表されました。 フルタイムとパートタイムの雇用の動きが、5人以上事業所と、このうち30人以上の事業所で微妙に異なっています。総じて30人以上の事業所での雇用が相対的に低調です。 常用雇用の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上1.4 0.63.3
うち30人以上0.4△0.12.3
常用雇用全体の伸び率は、2013年11月が1.2%、12月が1.2%、そして2014年1,2,3月が連続して1.2%です。4月は、やや加速しているようです。しかし、3月までに比べるとフルタイム労働者の増加率が低下しました。また、パートタイム労働者の増加率が再び3%台に戻りました。30人以上の事業所では、フルタイム労働者の増加率がマイナスになってしまいました。賃金の低いパートタイム労働者の割合は高まり続けているので、平均賃金への押し下げ効果は続いています。 現金給与総額は、3月に引き続き0.7%の増加です。1月、2月のわずかなマイナスから3月にプラスに転じたときは、消費税増税を控えて生産が活発になっていたことを反映しているのだろうと考えていました。しかし、4月もフルタイム労働者の所定外給与は6.7%と比較的高い増加になっています。 所定内給与の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上△0.30.10.7
うち30人以上0.20.50.7
全規模では、0.3%の減少です。しかし、就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.1%、パートタイム労働者も0.7%の増加です。フルタイム労働者のものは前月はマイナスでした。パートタイム労働者の所定内給与は、これで4か月連続の増加です。パートタイム労働者の所定内労働時間は0.8%減っていますので、1時間当たり所定内給与は1.5%増加しています。このところ、1%程度の上昇が続いていたのですが、少し加速した感があります。 「雇用と賃金を考える(2014年3月・常用労働者)」で、「4月には学卒者が新規採用されて働き始めます。採用は増えたようですので、雇用全体がどうなるか注目すべきでしょう。所定内賃金は安くて当然なので、賃金にはマイナスの効果が出るでしょうが。」と書いたのですが、この効果は乗り越えられたようです。 フルタイム労働者の雇用×総実労働時間で労働投入を考えると0.4%と大きな増加ではありませんが、マイナスになっているわけでもないのでフルタイム労働へのの需要は増加し、所定内給与も上がっていると考えていいと思います。 雇用の増加率と所定内賃金の上昇率を合わせると、雇用されている労働者全体の所定内給与の増加率が得られ、勤労者の購買力の指標とみなすことができます。 所定内給与合計の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上1.10.74.0
うち30人以上0.60.42.9
全体では1.1%の増加で、名目でみれば購買力は増加しています。しかし、4月の消費者物価の上昇率はこれを超えています。実質でみれば、所定内給与で買える量は減っています。実質賃金の低下はやむを得ないとしても、雇用の伸びがもっと高くなり、基調として購買力が増加しないと勤労者の生活向上も、経済成長も期待できません。 次に総実労働時間を見ましょう。押し並べてて減少です。 総実労働時間の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上△0.7△0.2△0.4
うち30人以上△0.4△0.2△0.2
パートタイム労働者の総実労働時間は短縮が続いています。 雇用の伸びと合わせて労働投入の伸びを計算すると次のようになります。 総労働投入の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上0.70.42.9
うち30人以上△0.3△0.31.9
全体では0.4%、パートタイム労働では2.9%です。1時間当たり所定内給与が1.5%上がっても労働供給は2.9%しか増えないのですから、弾力性はおよそ2です。依然としてパートタイム労働市場のタイト化が続いているようです。もっともパートタイムで働いたときの実質1時間当たり所定内給与は減っているのですが。 人気blogランキングでは「社会科学」の16位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング