雇用と賃金を考える(2014年3月・常用労働者)

毎月勤労統計の3月確保が先日発表されました。 (以下、%はすべて前年同期比です。) 賃金から見ていきます。 「雇用と賃金を考える(2014年2月・常用労働者)」で、「なかなか判断が難しい数字」と書きましたが、3月も難しいです。 理由は同じで、フルタイムとパートタイムの雇用の動きが、5人以上事業所と、このうち30人以上の事業所で微妙に異なっているからです。 常用雇用の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上1.20.92.1
うち30人以上0.40.30.4
常用雇用全体の伸び率は、2013年11月が1.2%、12月が1.2%、そして2014年1,2,3月連続して1.2%です。これを見る限り巡航速度で増加を続けているように見えますが、中身が徐々に変わってきています。フルタイム労働者の増加率が高まり、パートタイム労働者の伸び率が低下してきているのです特に、。30人以上の事業所では、3月にはフルタイムとパートタイムの伸び率がほとんど同じに近くなってます。賃金の低いパートタイム労働者の割合は高まり続けているので、平均賃金への押し下げ効果は続いているのですが、その力は弱まりつつあります。 現金給与総額は、0.7%の増加です。1月、2月はわずかですがマイナスでしたので大きな改善のように見えます。しかし、3月は消費税増税を控えて生産が活発になっていたと思われますので、所定外給与も含めた現金給与総額でみると、基調の判断ができなくなる可能性があります。(反動減が出る4月以降も、方向は逆ですが、同じ効果が出る可能性があります。)そこで、所定外労働に影響されない所定内賃金を見ることにします。 所定内給与の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上△0.3△0.10.6
うち30人以上0.10.10.7
全規模では、0.3%の減少です。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.1%の減少、パートタイム労働者は0.6%の増加です。 パートタイム労働者の所定内給与は、これで3か月連続の増加です。パートタイム労働者の所定内労働時間は0.5%減っていますので、1時間当たり所定内給与は1.1%増加しています。このところ、1%程度の上昇が続いています。 フルタイム労働者の雇用がかなり高い伸びを示していることを勘案すると、賃金減少は賃金の低い労働者が新たに雇用された可能性が高いと思われます。フルタイムの需要が減少して賃金が下がったということではないと思われます。 注目されるのは、30人以上の事業所です。ここではフルタイム労働者の所定内給与も、0.1%と小さな割合ですが増加しています。雇用も増加し、賃金も上昇していますので、ずいぶんいい数字のように感じられます。 雇用の増加率と所定内賃金の上昇率を合わせると、雇用されている労働者全体の所定内給与の増加率が得られます。この数字は、勤労者の購買力の指標となるものですから、重要です。計算してみると次の通りになります。 所定内給与合計の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上0.90.82.7
うち30人以上0.50.41.1
全体では0.9%の増加です。名目でみれば購買力は増加しています。しかし、3月の消費者物価の上昇率はこれを超えています。実質でみれば、所定内給与で買える量は減っています。実質賃金の低下はやむを得ないとしても、雇用の伸びがもっと高くなり、基調として購買力が増加しないと勤労者の生活向上も、経済成長も期待できません。 4月には学卒者が新規採用されて働き始めます。採用は増えたようですので、雇用全体がどうなるか注目すべきでしょう。所定内賃金は安くて当然なので、賃金にはマイナスの効果が出るでしょうが。 次に総実労働時間を見ましょう。 総実労働時間の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上0.50.8△0.2
うち30人以上0.40.5△0.2
パートタイム労働者の総実労働時間は短縮が続いています。 雇用の伸びと合わせて労働投入の伸びを計算すると次のようになります。 総労働投入の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
5人以上1.71.71.9
うち30人以上0.80.80.2
全体では1.7%、パートタイム労働では1.9%です。1時間当たり所定内給与が1.1%上がっても労働供給は1.9%しか増えないのですから、弾力性は2を切っています。依然としてパートタイム労働市場のタイト化が続いているようです。もっともパートタイムで働いたときの実質1時間当たり所定内給与は減っているのですが。 人気blogランキングでは「社会科学」の32位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング