「増税する前に無駄を省け」という前に考えておくべきこと

「国債金利について」について」で書いたように、国債金利の上昇を私は恐れています。国債金利の支払いは無駄の中の無駄でしょう。

増税する前に無駄を省けと主張される方がいます。気持ちはわからないでもないですが、危険な考え方です。

無駄を省くのには時間がかかるでしょう。無駄を省けば増税の必要がなくなるわけでもないでしょう。その時、無駄を省くのを優先していると何が起こるか、考えてみたいと思います。

まず、日本の財政が、今どうなっているか確認です。

24年度予算の歳出は90兆円です。このうち、国債の償還に充てるのが12兆円ですから、実質的な支出は78兆円です。これだけの収入があれば、国債残高は増えません。

残念ながら、税収は42兆円しかありません。税金以外の財産の切り売りの収入などを度外視すると36兆円は国債残高が増えてしまいます。

そこで、無駄を省くことを考えてみます。まず、省けない支出の筆頭は国債の利子の支払いです。払わなければデフォルトでとんでもないことになります。踏み倒すわけにはいきません。これが10兆円あります。次に、地方公共団体へ渡す交付金があります。これが、17兆円です。

これら以外の支出は、51兆円です。そしてこれらを払った後の税収の残りは15兆円です。差は36兆円です。

36兆円の無駄があるなら、これを一気にカットすればいいのですが、全部が無駄ではありません。15兆円で国が運営できるはずがありません。年金の国庫負担だけで10兆円ありますから(これを無駄というなら別ですが)、これを除くと国には5兆円しかありません。2兆円は小中学校の先生方の給与、2兆円は自衛隊員の給与です。義務教育と国防をゼロにしていいとは思えません。残りは1兆円です。給与を2割削減したとしても、2兆円に足りません。この金額で国を運営するのは不可能です。

また、財政支出に必要な自然増もあります。この自然増をこなしたうえで、さらに毎年5千4百億円の無駄遣いの削減を、5年連続で実施したとしましょう。なぜ、5千4百億円という半端な額なのか不思議に思われるでしょうが、計算していくとわかります。

25年度 

歳出は51兆円から5千4百億円差し引いた50兆4千6百億円。

税収から国債の利子の支払い、地方交付税交付金などを差し引いた額は、24年度に増えた国債の利子を1.5%とすると14兆4千6百億円に減ります。

二つの差は、36兆円です。これだけ国債を増発することになります。

26年度 

歳出は25年度の50兆4千6百億円から5千4百億円差し引いた49兆9千2百億円。

税収から国債の利子の支払い、地方交付税交付金などを差し引いた額は、25年度に増えた国債の利子を1.5%とすると13兆9千2百億円に減ります。

二つの差は、36兆円です。これだけ国債を増発することになります。

27年度 

歳出は26年度の49兆9千2百億円から、5千4百億円差し引いた49兆3千8百億円。

税収から国債の利子の支払い、地方交付税交付金などを差し引いた額は、26年度に増えた国債の利子を1.5%とすると13兆3千8百億円に減ります。

二つの差は、36兆円です。これだけ国債を増発することになります。

28年度 

歳出は27年度の48兆8千4百億円から、5千4百億円差し引いた48兆3千億円。

税収から国債の利子の支払い、地方交付税交付金などを差し引いた額は、28年度に増えた国債の利子を1.5%とすると12兆3千億円に減ります。

二つの差は、36兆円です。これだけ国債を増発することになります。

さて、5年間の自然増に加えて2兆7千億円(5千4百億円×5)の削減をした成果は何でしょう。

まず、これだけの無駄を省いたことです。しかし、毎年の国の財政不足額は36兆円のままです。

これは国債残高を180兆円(36兆円×5)増やし、その利払いが2兆7千億円増えたためです。無駄遣いが減った分だけ国債金利の支払いが増えたという結果になっています。

この5年が終わった後赤字を解消するために増税しなければならない額は不変です。

それでも、増税を先送りできるのですからそれでいいという考え方もあるかもしれません。しかし、無駄は減っているのですから、だんだん無駄を減らす余地は少なくなっています。いつまでも先送りできるわけでもありません。そして、国債残高は増えてしまっている。

もし5年後に国債残高が増えていて、歳出削減の余地が少ないことを理由に国債金利が上昇すれば、恐ろしいことになります。5年後には国債残高は880兆円ぐらいになっています。

また、この5年間に国債金利が上がれば、必要な自然増+5千4百億円では足りなくなります。

国債金利が1.5%という好条件のもとでも、増税をする前に無駄遣いを削減するなら、必要な自然増+毎年5千4百億円の無駄遣いの削減が最低ラインです。これは可能なのでしょうか?できないなら、さっさと増税をしたほうがいい結果を生むでしょう。金利の支払いを抑えられるからです。

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