市場化テスト その5

市場化テスト その4」について

今回は「服務」、一般の会社なら勤務でしょうか。

まず、国家公務員の場合。

1 服務の根本基準(国家公務員法第96条第1項)

すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。

 これは委託先企業の職員に求めるのは無理でしょう。国民全体の奉仕者ではないのですから。

これと同じ効果を発揮させようとするなら、会社のために働くことが、自動的に公共の利益のためになるように、委託契約をうまく作ることが必要です。さらに会社のために働くことが、労働者の利益に繋がるようにしておかなければなりませんが、これは国が手を出せない分野です。

2 宣誓(国家公務員法第97条)

 国家公務員の場合、服務の宣誓をしなければなりません。

3 法令及び上司の命令に従う義務(国家公務員法第98条第1項)

 職員は、職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に従わなければならない。

 簡単そうでいてなかなか難しい。これを委託先企業の従業員に守らせるのは至難でしょう。公務はしばしば、法令に基づいて実施しなければならないのでしょう。委託先企業が、その法令の意味を明確に理解し、実施する職員も理解していなければなりませんが、そんなことをよく知っている企業があるのでしょうか。ないとすると、委託者である国が、それを教えなければなりません。本来、ある仕事を委託するというのは、委託者が受託者の面倒をみなくても、受託者がその仕事をやれることが前提になっているはずです。

人手だけ出して、研修を国に頼むというのでは、委託ではなく、労働者派遣です。

4 争議行為の禁止(国家公務員法第98条第2項)

 国家公務員の場合、「政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、または政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。また、何人もこのような違法な行為を企て、またはその遂行を共謀し、そそのかし、若しくは煽ってはならない。」

 共謀し、そそのかし、あおり、または企てたものは3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。同盟罷業などを行ったものは、国家公務員法違反ですから、第82条に基づき懲戒を受けます。

 さらに強烈なのがこれです。

5 団結の禁止(国家公務員法第98条第2項)

「警察職員及び海上保安庁または監獄におい勤務する職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成し、またはこれに加入してはならない。」

 団体を結成したものは、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。加入したものは、国家公務員法違反ですから、第82条に基づき懲戒を受けます。

 委託先企業の職員には、団結権、団交権、争議権があります。憲法で保障されています。委託先との契約で、その職員の権利を制限することはできません。もちろん国が懲戒などできませんし、懲戒をさせることもできません。

 委託する場合には、争議が行われることを前提とすべきです。具体的には、委託した業務がストップすることを想定しておくべきです。

 労務屋さんのブログ(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060221)で、議論になっているのですが、本当に刑務所を民間委託して、ストが起こったらどうなるのでしょうか。

 囚人が飢え死にするかもしれませんし、外から誰かが入ってきて囚人を逃がしてしまうかもしれません。少なくとも囚人に適切な待遇を与えなかったと言うことで、国は賠償をしなければならないのではないでしょうか?委託していたからといって、国が責任を免れるわけではありません。

(続く)

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