市場化テスト その6

市場化テスト その5」の「服務」の続きです。

国家公務員の場合。

6 信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条)

 「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」

 これへの違反には罰則はありません。違反があれば懲戒の問題です。年金記録ののぞき見はこれで処分されたのではないでしょうか?のぞき見ただけなら秘密を漏らしたとは言えませんから、罰則のある守秘義務違反には問えません。

 これは委託先企業の職員が国家公務員なら信用失墜に当たるような行為をしてはならないと考えるかどうか?

7 秘密を守る義務(国家公務員法第100条第1項)

 違反すれば、1年以下の懲役または3万円以下の罰金です。面白いことに国家公務員であるかどうかに関わらず、秘密の漏洩を「企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はその幇助をした者」にも同じ罰則が適用されています(国家公務員法第111条)。

 今回の市場化テスト法案では、罰則付きで守秘義務は課していますが、「命じ、故意にこれを容認」した者などには罰則がありません。受託先企業で公務に携わる社員に、上司が秘密を漏らすことを命ずる行為は違法ではないことになるのですが、何か変な気がします。深い理由があるのでしょうが。

8 職務専念義務(国家公務員法第101条)

 これは受託企業の職員に要求するのは無理でしょう。公務と公務でない仕事を組み合わせて職員に割り当て、効率化を図ることができなくなります。

9 政治的行為の制限(国家公務員法第102条)

 これも受託企業の職員に要求するのは無理でしょう。市民的権利の最たるものですから。今回の法案でもこのような制限はされていません。就業規則で縛っても刑罰は掛けられません。そもそも、そのような規則が有効かという問題もあります。

 公務に携わる人間が政党に所属して、積極的に活動していたり、公務の窓口へ行ったら政党や立候補者のポスターが張ってあったり、職員がバッチをつけていたりしても悪くないということです。まあ、選挙管理委員会の事務を委託して、その会社の社長が候補者だったらどうするのかと思いますけれども。

 かなり広範囲の公務員を選挙で選ぶことにしている国であればあまり違和感はないのでしょう。

10 私企業からの隔離(国家公務員法第103条)

 これは必要ないという判断でなければなりません。職員は必ず受託先の企業に勤めているのですから。退職後、職務に関連のある企業に就職する天下りより、遙かに密接な関係を持つことになります。これを問題にするのであれば、民間委託などできません。

(続く)

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