昨日の続きです。
猪瀬委員のご発言の(4)もよく分かりません。しかし、「働く女の人の方が働かない女の人より
出生率が高い」ということであれば、統計の議論にできます。
しかし、これも少しばかり洗練する必要があります。
まず、「年齢が同じなら」という条件が必要でしょう。専業主婦の中には40代、50代、60代あるいはそれ以上の方が多く含まれます。この方々は、40代でも出産の確率はかなり低く、50代、60代なら、まず出産しません。(下の表を見ていただくと、わかります。)年齢の差を無視しては、社会的に意味がある主張にはなりません。
次に、働いている女性、専業主婦をどう捉えるかが問題です。学校を出て、働きはじめ、結婚して、妊娠して、出産して、仕事を辞める。あり得るパターンです。出産した時点では働いていますが、辞めれば専業主婦です。皆がこういうパターンに従うと、「働いている女の人の
出生率は高く、専業主婦の
出生率は低い。」という結論になってしまいます。逆に、学校を出て、働きはじめ、結婚して、妊娠して、仕事を辞めて、出産する。これは、よくあるパターンです。こちらだと、「働いている女の人の
出生率は低く、専業主婦の
出生率は高い。」ということになります。
実際には両者に大きな違いはありません。専業主婦と働いている女性の比較をしたいのであれば、妊娠前に働いていたかどうかで判定する必要があります。
もう一つ、子供がいる人ほど子供を産まないという傾向があります。専業主婦の方が子供のいる割合が高いとすると、同じ
出生率でも、専業主婦の方が子供を産む率が高いことになります。
幸い、こういうような統計が存在しています。
厚生労働省の「出生前後の就業変化に関する統計」です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/04/4.html#4-4
表4-7を見てください。
有職、無職は出生1年前のものです。妊娠前です。数字は女性千人につき何人赤ちゃんが産まれているかを示しています。標準化
出生率は、有職、無職の女性の年齢構成の差を調整したものです。
出生率(女子人口千人対)年齢 | 有職 | 無職 |
---|
19歳以下 | 13.4 | 4.4 |
20から24歳 | 38.9 | 42.7 |
25から29歳 | 87.6 | 123.1 |
30から34歳 | 85.8 | 103.4 |
35から39歳 | 28.4 | 38.3 |
40から44歳 | 3.5 | 4.7 |
45歳以上 | 0.1 | 0.1 |
標準化出生率 | 24.4 | 30.0 |
19歳以下を除きすべての年齢で、無職、つまり専業主婦の方が多くの赤ちゃんを産んでいます。年齢構成の差を調整して、特に、よく生む年代、25歳から34歳までではその差は、相当なものです。専業主婦と働く女性の年齢構成の差を調整した上で、全年齢で見ても(標準化
出生率の欄です。)、やはり専業主婦の方が多くの赤ちゃんを産んでいます。
なお、この統計表では子供の数を考慮していません、子供の数が同じという条件をつけると、もっと差がつくのではないかと思います。
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