「
母親のワークライフバランス」では、
厚生労働省の、「
第8回21世紀出生児縦断調査」を使って、母親の「常勤」の問題を議論しました。
今回、
厚生労働省がこの調査の「
第二波」を発表しました。これまでの調査は2001年に生まれたお子さんと家族の状況を追跡して調査していたのですが、今回のは2010年生まれのお子さんの状況です。まだ、第1回ですので追跡した変化というのは、原則としてありませんが、出生(出産)前後のお母さんたちの仕事の変化は調べられています。調べられているのは、出生(出産)1年前、つまり妊娠前、と出生(出産)6か月後の状況です。出産6か月後に調査が行われているので、出産1年前の状況はリアルタイムで調べたものではなく、過去のことを振り返って思い出して答えてもらったもの(レトロスペクトなデータ)です。古いことだと忘れてしまっていたり、記憶違いがあったりするのですが、この調査の場合は、それほど昔というわけではないので、かなり正確だと思われます。
この第二派の実施により、9年前との比較ができるようになります。二つの比較により、繰り返し行われるクロスセクションの調査よりも、はるかに豊富な情報量が得られることになります。十分、活用されることを期待します。
注目すべき点がいくつかあるので、2001年出生時の時と比較しながら、紹介したいと思います。ただ残念なことに、第1子を生んだお母さんに限った集計しか発表されていないので、その範囲の議論になります。
時間を追ってみていきますと、まず、出生(出産)1年前にどれだけのお母さん、この時はまだお母さんではありませんが、が「有職」、「常勤」であったかを見ましょう。(分母には不詳を含んでいます。)
出生(出産)1年前の状況出生(出産)年 | 有職の割合 | 常勤の割合 | 無職の割合 |
---|
2010年出産(第2波) | 78.8% | 51.6% | 20.6% |
2001年出産(第1波) | 73.5% | 47.2% | 25.6% |
変化 | 5.2ポイント上昇 | 4.4ポイント上昇 | 5ポイント低下 |
「有職」の割合も「常勤」の割合も増えています。「無職」で生む方の割合は低くなっています。「無職』が減っているのは、完全な専業主婦が減っているともしれませんし、妊娠するまでは働くということになっているのかもしれません。概していえば、働く女性の中で「常勤」ではない方の割合が上がっているはずなのですが、第1子を出産された方に限ると「常勤」の割合が高まっているということは、「常勤」のほうが第1子出産に踏み切りやすいのかもしれません。
次に、第1子を生んだお母さんが、出産後6か月の時点の仕事の状況を見ます。
出生(出産)後6か月の状況出生(出産)年 | 有職の割合 | 常勤の割合 | 無職の割合 |
---|
2010年出産(第2波) | 36.6% | 28.5% | 62.7% |
2001年出産(第1波) | 24.6% | 17.8% | 74.3% |
変化 | 12ポイント上昇 | 10.7ポイント上昇 | 11.6ポイント低下 |
「有職」、「常勤」の割合が上昇し、「無職」の割合が元の割合の3分の2ぐらいまで減っています。
最後に、産む前に常勤であったお母さんが6か月後も常勤である割合を見ます。
出生(出産)前1年に「常勤」であった母親の出産6か月の仕事の状況出生(出産)年 | 有職の割合 | 常勤の割合 | 無職の割合 |
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2010年出産(第2波) | 58.6% | 54.7% | 41.5% |
2001年出産(第1波) | 40.2% | 36.8% | 59.4% |
変化 | 18.4ポイント上昇 | 17.9ポイント上昇 | 17.9ポイント低下 |
「有職」と「無職」の割合が4対6から6対4に逆転しています。常勤の女性が第1子を生んだ後も働いているのが普通になっているのです。9年間の変化としては大きいと思います。
第1波の調査では、出産1年前に「常勤」だった方は出産後7年半で「常勤」の割合が39.2%でした「
(表1)」。今回は、6か月後で54.7%です。常勤継続率は、大きく上昇したといえるでしょう。
育休明けに仕事を辞められる方もいるかもしれませんし、次のお子さんが生まれると、仕事を辞める方もいるかもしれません。
しかし、「常勤」の女性が第1子を出産した後も、「常勤」でいるのが
過半数という状況にはなっています。世の中は、1年、1年を見ればそう変わっていないように見えても、9年間では大きく変わったといえるでしょう。
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