所得が減っても消費は緩やかに増えるのか?

今日の日経新聞の日本経済の視点、「夏季ゼミナール④」のタイトルは「雇用・所得環境は改善へ」です。書枯れているのは日本総合研究所です。 雇用や賃金の過去の動きなどの説明は間違ったことは書いていません。700字に満たない分量ですから、言葉足らずな部分はあるでしょうが、やむを得ないことです。 私が首をかしげているのは、将来の見通し部分です。気になる点が三つあります。 まず、今後の雇用・賃金の動きの見通しです。次の通り書かれています。 人手不足感を背景に、雇用・賃金の増勢は維持される見込みである。 これは、将来の生産次第でしょう。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2014年5月確報) その3」で示したように、フルタイム労働者が増えたとはいえ、増加の中心はパートタイムです。経済活動の変化に対する反応が早い市場なので、どうなるかわかりません。また、フルタイム増加の動きはそれほど強くないような気がします。ようやく増え始めたばかりで足取りがしっかりしていません。よちよち歩きです。 総括的なまとめの部分はこうです。 雇用者報酬が、雇用者数、賃金の両面から改善を続けることは、個人消費の回復を引き続き支えるだろう。 実質で増えていれば、確かにその通りでしょう。付け加えるならば、将来の実質見通しが明るくなれば、足元の実質所得が同じでも、実質消費は増える可能性が高いでしょう。 しかし、最後に留保が付け加えられています。 もっとも消費税引き上げの影響もあり、物価が賃金の伸びを上回って上昇し、所得は実質ベースでは減少している。このため、個人消費の改善テンポは緩やかなものにとどまる見通しだ。 減っているのは賃金だけではありません。マクロの消費はマクロの賃金、雇用の伸びを考慮した雇用者報酬で決まるでしょう。雇用者報酬を見ても実質では減っています。果たして、マクロで実質賃金が減って、マクロの実質消費が増えるでしょうか? フルタイム労働が増えるような政策的てこ入れが必要だと思います。すぐに検討を始めるべきです。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング