毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年4月確報)

4月の確報が発表されました。概ね、堅調な動きといっていいと思います。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年3月確報)」で、「(パートタイム労働者の人数が)3月も4.6%と高い伸びになっています。もう一つの特徴は、1月、2月は常用労働者全体が受け取った賃金の総額が実質でみてほぼ横ばいになっていたのですが、3月は△0.8%になったことです。」と書きましたが、4月はパートタイム労働者の人数の増加率が3.8%に下がりました。また、労働者一人当たり平均実質賃金は0.1%減少したものの、労働者数が2.0%増加したため、労働者全体が受け取る実質賃金の総額は1.9%増加しました。ようやく消費税率引き上げの影響が消えて、労働者の生活がよくなってきたようです。 雇用の動きを見ると、かなりいい感じです。常用雇用全体では2.0%増加、パートタイム労働者は3.8%増加ですが、一般労働者が1.3%と高めの増加率です。いい傾向だと思います。製造業でフルタイム労働者が0.2%減っているのは残念です。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月1.4 0.63.3
5月1.40.73.1
6月1.51.02.8
7月1.71.13.0
8月1.71.32.4
9月1.71.12.9
10月1.61.02.8
11月1.61.12.8
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
総実労働時間も、全体では1.2%増えています。ただ、就業形態別にみると、一般(フルタイム)労働者は1.5%増加しています。パートタイムの0.2%減少とパートタイム労働者割合の高まりがあったので、全体の伸びは抑制されています。所定内労働時間は、全体では1.3%、フルタイムは1.9%、パートタイムは0.2%とすべて増加です。フルタイム労働者の所定外労働時間は1.7%短くなっています。3月に引き続いての減少です。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月△0.7△0.2△0.4
5月△0.8△0.4△0.8
6月0.51.0△0.1
7月0.71.0△0.2
8月△1.6△1.5△1.9
9月0.50.8△0.2
10月0.51.2△1.4
11月△2.7△2.7△2.0
12月△1.1△0.7△1.7
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えます。労働投入は3.2%増加しています。3月に引き続いてかなり高い伸びです。幸いにして労働需要が崩れる傾向はうかがえません。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
これに対して名目平均賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では0.7%増加と3月の横ばいから好転しました。フルタイムは、3月より大きな0.9%の増加、パートタイムも3月の0.6%より大きな1.3%の増加です。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.71.20.9
5月0.61.00.8
6月1.01.50.7
7月2.43.01.0
8月0.91.30.6
9月0.71.10.5
10月0.20.60.2
11月0.10.7△1.1
12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
所定内給与は、全体で0.70.4%の増加ですが、フルタイム労働者は0.90.6%、パートタイム労働者も1.3%の増加となっています。パートタイム労働者の所定内労働時間は0.0%と横ばいですので、1時間当たりに直すと1.1%の上昇です。3月は0.7%とこれまでに比べると低めの上昇率だったのですが、元に戻ったようです。 名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では2.7%の増加です。フルタイム労働者は2.2%の増加と3月に比べて増加率が大きくなり、パートタイム労働者は3月よりやや低いものの5.1%と高い伸びになっています。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
4月2.11.84.2
5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.91.25.2
4月2.72.25.1
実質でみると、3月は0.8%の減少でしたが、4月は一転して1.9%の増加です。これは消費税率引き上げの効果がなくなり、消費者物価の上昇率が低下したためです。 「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年1月確報)」で、「2月、3月でで雇用や賃金が崩れた様子はありません。4月以降消費税率引き上げの特殊要因がなくなるので、物価上昇率は低くなり、名目雇用者報酬が今の調子で増加すれば、実質で報酬が増えることになります。消費の拡大が期待できます。」と書きましたが、幸いこの見通しが当たったようです。 それにしても消費税率引き上げの景気抑制効果は明確です。もし原油をはじめとする資源価格の低下がなければ、景気はどうなっていたか分かりません。天佑というべきでしょう。17年4月には消費税率の2%の引き上げが予定されていますが、17年4月1%、18年4月1%の引き上げに分けるべきです。大きなショックを与えるべきではありません。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング