消えた「厳選採用」
近頃、とんと「厳選採用」という言葉を聞きません。昨年の学卒採用の報道では、まだ、「厳選採用」という言葉が使われていたはずだが。と思って確認してみました。
日経新聞の電子版で「厳選採用」を検索してみると、最後の記事がこれ。2014年5月16日付です。
大手企業が厳選採用の傾向を強めていることを受け、就職活動の途中で志望先を中堅・中小に変える大学生は多い。こうした中、過酷な労働を強いる「ブラック企業」への不安から慎重な職探しが広がり、民間の調査では8割が「就職先に満足」と回答した。大学の支援や中小企業の情報開示の仕組みも拡充しており、ミスマッチ防止に一役買っている。
今年は、少なくとも厳選採用という雰囲気はなくなっているのでしょう。
時期的なずれがあって恐縮ですが、2016年新規学卒採用者の初任給は、大学院修士課程卒業者が横ばいであった以外は、男女・学歴別にみてすべて前年比上昇しています。ちなみにこれは支払った実績であって、募集賃金ではありません。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/14/01.html
背景には需給の改善があったのでしょう。だとすると、採用側が「厳選採用」と言っていられなくなった来年春の採用者の賃金は、同じ質の卒業者なら上がるでしょう。同時に「厳選」されれば採用されなかった質が劣る(と採用側に考えられている)卒業者が、安めの初任給で採用されることもあり得ます。平均は多分上がるのではないかと思いますが。
新規採用者の賃金を上げると、1年上の労働者の賃金もバランスをとるために上げなければなりません。
需給が改善を続け、新規学卒者がほとんど普通の勤め口に採用されるようになれば、新規学卒賃金の平均が確実に上昇し、それに伴って若い社員の賃金の平均値も上がり始めるでしょう。ただ、ここでも、若手の中途採用が増えて、上昇が抑制される可能性はあります。
若者の労働市場で、供給余力がなくなるまで、若者平均賃金の上昇は緩やかでしょう。それを超えたところで本格的に平均賃金が上昇を始めます。
「厳選採用」という言葉がマスコミで忘れ去られるまで、需要拡大の手を緩めるべきではありません。
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