パートタイム労働者の
名目賃金を見ると、
現金給与総額は0.6%の減少です。11月は減少していた
所定内給与は0.0%と変化なしです。
所定内労働時間も0.7%のマイナスですので、1時間当たり所定内給与は、0.7%の上昇ということになります。ここ半年の動きを見ると2013年の7月は0.2%、8月は0.3%、9月は0.8%、10月は0.4%、11月は0.9%、でした。11月に比べると上昇率は下がりましたが、少なくとも時給は上昇が続いているとみていいでしょう。
「
雇用と賃金を考える(2013年12月・フルタイム労働者)」で書いたように、フルタイム労働者の雇用もパートタイム労働者の雇用も増加を続けています。また、
総務省統計局の
労働力調査の12月の基本集計(
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/201312.pdf)を見ても、15歳から64歳の就業率は72.2%で前年同月に比べ1.7%ポイント上昇しています。
労働市場のタイト化が進み、まず、需給の動きに対して敏感なパートタイム労働者の名目でみた時給が上昇しているということだろうと思います。ただ、産業別の動きも見て、確認しなければならないでしょう。
パートタイム労働者の人数の多い5つの産業の動きを見てみましょう。
賃金、労働時間の変化率(%)産業(常用雇用者数) | 所定内給与上昇率 | 所定内労働時間増加率 | 1時間当たり所定内給与上昇率 |
---|
卸売業、小売業(375万人) | 0.6 | 0.5 | 0.1 |
宿泊、飲食サービス(318万人) | 0.8 | △1.3 | 2.0 |
医療・福祉(187万人) | △2.8 | △2.0 | △0.8 |
その他のサービス(112万人) | 0.3 | 0.5 | △0.2 |
製造業(110万人) | 2.2 | 1.1 | 1.1 |
マスコミで報道されることの多い宿泊、飲食サービス業は確かに2.0%と高い上昇率です。あまりマスコミで報道されたのを見た記憶がないのですが、製造業も1.1%上昇しています。意外なのは医療、福祉の0.8%低下です。医療ではなく介護関係が伸びた影響かもしれません。
常用雇用は、11月の3.5%よりは低いですが、3.3%の増加です。すでに常用労働者全体でも、パートタイム労働者でも雇用の水準は過去最高になっています。どこまで増えるのかでしょう。
(次の表と産業別の動きの記述は2014年2月23日に追加)
産業別の動きを見ましょう。
常用雇用、総実労働時間、労働投入量の変化率(%)産業(常用雇用者数) | 雇用 | 労働時間 | 労働投入 |
---|
卸売業、小売業(375万人) | 2.4 | △0.3 | 2.1 |
宿泊、飲食サービス(318万人) | 4.8 | △0.9 | 3.7 |
医療・福祉(187万人) | 5.9 | △2.7 | 3.2 |
その他のサービス(112万人) | △1.8 | 0.6 | △1.2 |
製造業(110万人) | 6.4 | △0.6 | 5.8 |
製造業
おそらく、企業としては需要の拡大があるものの、税率引き上げ前の駆け込みであって4月以降落ち込む懸念があるため、パートタイム労働の投入を増やすことで対応しようとしているのだと思います。なお、今年の4月には新卒を多めに取っているので、それまでパートタイムでつなごうと考えている可能性もあります。これであれば、4月以降、フルタイムの常用労働が増える可能性があります。
この結果、雇用は6.4%と非常に高い伸びを示しています。
労働市場が徐々にタイト化している中で雇用を拡大し、所定内労働時間を延長するためには時給を引き上げることになります。
宿泊、飲食サービス業
やはり需要は増加しています。もともと、この産業はフルタイム労働者の3倍以上パートタイム労働者を雇用しているパートタイム型産業です。当然パートタイム労働投入を増やすことになります。
労働市場がタイト化している中で労働投入を増やすためには、時給を上げ、あまり長い時間働きたくない層も採用しなければなりません。その結果、一人当たり所定内労働時間も総実労働時間も短くなり、結果的には、労働投入を増やす以上の割合で雇用を増やしています。
医療、福祉
この産業は、医療と福祉で大きな賃金の差がある産業です。このせいで分析が難しくなっています。おそらく、需要が増えているのは、介護などの福祉であろうと思います。この需要にこたえるため福祉関係では労働投入を増やそうとします。たぶん介護報酬の関係で賃金は上げにくい状況があるのでしょう。労働時間が短くてもいいと採用の条件を緩和し、その結果所定内労働時間も、総実労働時間も減っています。賃金の低い福祉関係のウェイトが高まったため時給が下がって見えるのだろうと思います。
卸売業、小売業
この産業もパートタイム労働者が4割以上を占めるパートタイム型産業です。また、駆け込み需要、バブリーな一時的な需要増加に直面している可能性もある産業です。フルタイムも合わせた労働投入は減っています。その中でパートタイム労働の労働投入と雇用は増加しています。時給はほとんど変わっていません。フルタイム労働をパートタイム労働で代替しているだけのような気がします。
その他のサービス業
これは、非常に幅のあるそれぞれ異質なサービス業の集まりです(
http://www.stat.go.jp/index/seido/sangyo/pdf/19san3r.pdf)。そのため分析がなかなか難しいです。パートタイム労働の労働投入、雇用はは減っているのですが、フルタイム労働の雇用は2.9%と、全産業の0.2%に比べてかなり高い伸びを示しています。パートタイムからフルタイムへ代替が進んでいるという可能性もありますし、この産業の中でフルタイム型の業種で雇用が増え、パートタイム型の業種で雇用が減っている可能性もあります。何とも言えません。
フルタイム雇用の増加率より、パートタイム雇用の増加率のほうが高いので、パートタイム労働者の割合は上昇し、30.0%です。30%を超えたのは初めてではないかと思います。
パートタイム労働の労働投入量(
常用雇用×
総実労働時間)は、2.8%増加しています。単月でみると
名目賃金弾力性は4です。実質賃金で考えるとマイナスですので、まだ供給に余裕があるの可能性もあります。もう少し考えたいと思います。
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