雇用と賃金を考える(2013年12月・フルタイム労働者)

雇用と賃金を考える(2013年12月・常用労働者)」では、常用労働者全体の動きを見ましたが、今回は、そのうちフルタイム労働者(毎月勤労統計の公式用語では一般労働者)の状況を検討します。 現金給与総額は、1.5%増加とかなり高い伸びになっています。11月も1.3%の増加でしたので、2か月連続の1%越えです。これは実にめずらしいことなのです。2010年の6月、7月に連続して2%以上増加したことがあるのですが、これは前年の6月、7月が5%以上落ち込んだ反動です。通常の状態では、2005年の6月、7月以来のことです。9月に増加に転じて以来4か月連続して前年同月を上回っています。 今後、増加基調になるのかどうかが気になりますので、中身を見ると、残念ながら所定内給与は0.1%の減少です。増えているのは、所定外給与(5.9%増)と特別に支払われる給与(2.4%)です。 ただ、所定内給与の減少は、雇用拡大の中で賃金の低い層が新たに雇用された結果であるかもしれません。常用雇用を見ると、10月、11月に引き続き0.2%の増加です。したがって、労働者全体の所定内給与の合計額は0.1%ですが増えています。常用雇用もこちらも9月から連続4か月の前年同月比増加です。ただ、水準を常用雇用指数でみると99.8でリーマンショック前の2007年12月の100.6にはまだ0.8ポイント及びません。 (追記)季節調整値でみると、100.0になっています。一般労働者の常用雇用指数はリーマンショックの後の2009年2月に100.9のピークに達しています。これは、雇用が景気に遅行するためであると思われます。その後のボトムは2013年2月、3月の99.4です。ピークからボトムまでの差1.5ポイントのうち0.4ポイント分を9か月で回復したことになります。 また、産業間で増減に差が生じています。フルタイム労働者の数が200万人を超えている産業の中では、その他のサービス業(+2.9%)、建設業(+2.8%)、医療・福祉(+1.8%)、情報通信業(+1.7%)は好調ですし、運輸業、郵便業(+0.7%)も増加しています。半面、製造業(-1.8%)、卸売業、小売業(-1.2%)の二大産業は不調で、金融業、保険業(-1.2%)、学術研究等(-0.4%)、教育、学習支援業(-0.1%)は減少しています。建設業は公共投資などの効果や消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響もあると思います。建設業、医療・福祉などが日本人の雇用の増加を支えているといえるのですが、ここに外国人を入れようとする人たちは、何を考えているのでしょうか?   (注) フルタイム雇用者が一番多いのは製造業(689万人)、二番目が卸売業、小売業(495万人)です。ちなみに第三位は医療・福祉(428万人)です。 なお、調査産業計のフルタイム労働者の所定外労働時間は前年同月比14.5%増の18.2時間で高い水準です。指数でみると113.8で過去最高です。これまでの最高は、リーマンショック前の2008年3月の113.7でした。 この中で、製造業のフルタイム労働者の所定外労働時間は前年同月比14.5%増の18.2時間で高い水準です。指数でみると118.2です。これまでの最高は、リーマンショック前の2007年11月の127.2でした。この時期に比べるとまだ余裕があるといえるのかもしれませんが、現場では相当繁忙感が強いのではないでしょうか。さらに、製造業のパートタイム雇用者は5.4%増加しています。(卸売業、小売業のパートタイム雇用も1.2%増えています。)当面の仕事はあるのですから、フルタイム労働者の雇い入れにつながっても不思議はないのですが、駆け込みの影響とみて、雇用拡大に企業が慎重なのかもしれません。4月の学卒者の入職がどの程度になるか注目です。 現金給与総額の増加率(1.5%)とフルタイムの常用雇用の増加率(0.2%)を合わせると1.7%です。これがフルタイム労働者全体の給与の名目的な伸び率ということになります。悪くはないのですが、帰属家賃を除く総合で実質化すると、0.3%の減少です。もう少し、フルタイム労働者の雇用の伸びを高くする必要があるでしょう。 当面の目標は、2007年12月の水準でしょう。そのためには、生産や販売が着実に伸びていくこと、そしてパートタイム労働の供給にゆとりがなくなり、パートタイム労働者の賃金率が上昇していくことが必要でしょう。そこで、次回は、パートタイム労働者の動きを見る予定です。 人気blogランキングでは「社会科学」の26位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング