毎月勤労統計の2月確報が発表されました。パートタイム労働者の動きを検討してみたいと思います。
最初に、時間給に近い1時間当たり所定内給与を見ます。
1時間当たり所定内給与の増加率(%)産業 | 5人以上計 | うち30人以上計 |
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全産業 | 1.3 | 1.2 |
卸売・小売業 | 1.9 | △0.3 |
宿泊・飲食サービス業 | 2.5 | 2.0 |
30人以上の卸売・小売業では低下していますが、そのほかでは1年前に比べて増加しています。2月の消費者物価の上昇率は1.3%でしたので、5人以上の卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、30人以上の宿泊・飲食サービス業では
名目賃金率だけではなく実質賃金率で見ても上昇しています。
全産業よりも、5人以上の卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業、30人以上の宿泊・飲食サービス業の賃金の上昇率が全体よりも高いことを記憶しておいてください。
では、賃金を上げた効果で労働力の確保に成功したのでしょうか?雇用に移ります。
常用労働者の増加率(%)産業 | 5人以上計 | うち30人以上計 |
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全産業 | 2.6 | 1.4 |
卸売・小売業 | △0.7 | △0.5 |
宿泊・飲食サービス業 | 2.1 | △1.4 |
全体では増加していますが、卸売・小売業では5人以上の事業所でも、30人以上の事業所でも減っています。宿泊・飲食サービス業では、5人以上では増えていますが、30人以上に限ると減っています。
次に、一人当たり総実労働時間、これは残業時間などを含んでいます。
総実労働時間の増加率(%)産業 | 5人以上計 | うち30人以上計 |
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全産業 | △0.9 | △1.0 |
卸売・小売業 | △0.9 | △0.1 |
宿泊・飲食サービス業 | △3.1 | △2.3 |
全体でも減少傾向ですが、宿泊・飲食サービス業の減少の大きさが目立ちます。これまであまり採用していなかったかなり短時間のアルバイト、パートなどでも雇っているのだろうと思います。
この二つを掛け合わせると、労働投入量が計算できます。
労働投入の増加率(%)産業 | 5人以上計 | うち30人以上計 |
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全産業 | 1.7 | 0.3 |
卸売・小売業 | △1.6 | △0.7 |
宿泊・飲食サービス業 | △1.1 | △3.7 |
1時間当たり所定内給与の引き上げた甲斐いがあって全体では、労働投入量を増やすことに成功しています。しかし、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業では、全体を上回る賃金率上昇であったにもかかわらず、労働投入量は減ってしまっています。
パートタイム全体では増えていますし、フルタイム全体も増えています。労働供給全体が減ったわけではありません。その中で、賃金率を上げても労働投入を増やせなかったのですから、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス業は、他の産業とのパートタイム労働力獲得競争に負けたといっていいでしょう。フルタイム労働を提供する事業所に負けた可能性もあります。買い負けという言葉に倣えば、
雇い負けです。労働力を確保するためには、もっと賃金率を上げるか、他の方法で待遇を改善するか、これまでは雇わなかったような労働者を雇い入れなければなりません。
ちなみに、労働投入の1時間当たりの所定内給与弾力性は次の通りです。
弾力性産業 | 5人以上計 | うち30人以上計 |
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全産業 | 1.3 | 0.3 |
卸売・小売業 | △0.9 | 2.4 |
宿泊・飲食サービス業 | △0.4 | △1.9 |
宿泊・飲食サービス業では、弾力性が負になっています。
宿泊・飲食サービス業の事業環境は変わり始めているようです。適応が求められています。
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