民主党の新年金制度案(1) 税財源の不安定性
民主党が新年金制度の財政イメージ(暫定版)を公表しました。
「使用データ(特に無職者や自営業者も含めた年収の平均値や、生涯年収の分布)は限られたデータを元に大胆な仮定を置いて推定したものが多く、非常に荒い試算となっており、今後のデータの精査により結果が相当変わる可能性がある。」とされています。
このこと自体はその通りでしょう。しかし、今後データを精査したとしても、そのデータから将来の生涯年収が分かるのでしょうか?40年後、60年後に生涯所得の分布がどうなっているかの予測は不可能です。
「ゼロ円と50兆円の間」に書いたように「最低保障年金の最高額、補足年金を支払うべきメインの年金の最低額など制度が決まれば補足年金の財源が決まるという錯覚を抱いている方がいるようなのですが、そうではありません。制度が同じであっても、保険料を支払うべき時期の所得が髙い人が多いか、低い人が多いかで相当な差が出てきます。
実際にどうなるかは、神のみぞ知るです。」
しかし、おそらく次のことは正しいでしょう。
1 長期にわたって好況が続けば、生涯年収の高い人の割合が増え、最低保障年金の支給対象者は減る。したがって、最低保障年金のための税投入は少なくて済む。逆に、長期にわたって不況が続けば生涯年収の低い人が増え、最低保障年金の受給者は増える。そして、最低保障年金のために必要な財源は増える。
2 長期にわたって好況が続けば、財政には余裕が生じている。逆に、長期にわたって不況が続けば、財政は厳しくなっている。
つまり、この制度では財政が豊かである時に年金の支払いのための税支出が少なく、財政が厳しいときに税支出が増えるのです。制度として安定性を欠くでしょう。よほど強固な国民の年金への支持がなければ、不況が続いたときに、最低保障の支給範囲や支給額を維持するのは困難であると思われます。
ちなみに社会保障人口問題研究所の人口推計では、出生率も死亡率も中位と仮定した場合、2055年の65歳以上人口は3,626万人です。この半分が、最低保障年金を受け取ると仮定します。所得比例年金の額が月1万円、年12万円変化しただけでも、支給額には2兆2千億円の差が出ます。受け取る割合そのものも変化しますから、変動はもっと大きいでしょう。
このような不安定が、所得比例年金と最低保障年金を組み合わせた年金制度の特徴なのです。
ここをクリック、お願いします。
人気blogランキングでは「社会科学」では41位でした。