2006年福祉宇宙の旅 その2

2006年福祉宇宙の旅 その1」で説明した「低所得世帯に最低生活費と所得との差額を支給する」という手法には、大きな欠陥がありました。勤労へのインセンティブがない、言い換えればメイク ワーク ペイにならないことです。

この欠陥をある程度是正するための方法として、ある一定額の所得と勤労所得の差額の一定割合を支給するという方法が考えあられます。ここで勤労所得というのは、勤労により得た収入、例えば給与からそのために必要な支出、例えば通勤費を差し引いた額です。

わかりにくいと思いますので、数値例を一つあげておきます。

一定の金額を200とします。

一定割合を5割とします。

勤労所得が100の場合支給額と世帯所得はこうなります。

1 一定の金額(200)と勤労所得(100)の差額は100。

2 この差額との5割は50。これが給付額です。

3 勤労所得100と支給額50を足した150が世帯の収入となります。

今、もっと働いて勤労収入が120に増えたとすると、こうなります。

1 一定の金額(200)と勤労所得(120)の差額は80。

2 この差額との5割は40。これが給付額です。

3 勤労所得120と支給額40を足した160が世帯の収入となります。

なお、勤労所得がゼロの時の給付額は、(200-0)×0.5=100です。

これは同時に世帯所得でもあります。

また、勤労所得が200になれば、給付額はゼロで、世帯所得は200です。

このように、勤労所得が増えれば、世帯収入が必ず増えます。ですから、一応、メイク ワーク ペイ にはなっています。

しかし、この制度にも、いろいろと問題があります。

まず、これは最低限度の生活水準、具体的には消費、の保障という政策目的を純粋に追求したものとは言えなくなることです。同じシステムの中で世帯所得に差がでます。上の例で言えば、最大200,最小100です。最低限度の生活を送れる所得の保障とはいえなくなります。場合によれば不必要な給付をしているという批判を浴びるでしょう。これを避けるために一定の金額を下げると、それに合わせてこのシステムの元手保障される最低の所得も減ります。

また、勤労所得が増えてもその金額の一定割合しか世帯所得は増えません。このような制度が一切ない場合に比べて勤労へのインセンティブが弱いのです。

次回この制度についてもう少し続けます。

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