一部門、固定係数生産関数による日本経済の現状の分析の試み その1

rascalさんへのお返事」を書いた夜のことです。脚本風に書くとこんなことがありました。

場所 平家の寝室

時間 丑三つ時

平家が寝ている。突然、小さな男の子が現れ、しくしくと泣き始める。平家、気配で目覚める。驚いて男の子に話しかける。

平家 「坊や、お名前は? どうして泣いているの?」

男の子 「僕の名前は 1部門固定係数生産関数モデルです。みんなが僕を役立たずだといって、いじめるので泣いています。」

平家 「・・・・君は立派なモデルだよ。役立たずなんかじゃないよ。」

男の子 怒って、「嘘つき。平家さんだってアライグマ○○○○と一緒になって、僕のことを役に立たないとブログで、みんなに言いふらしているじゃないか。」

平家 「・・・そんなことは言ってないよ。『活用できる局面はあまり多くないと思う』と言っただけだよ。」

男の子 さらに怒って、「同じことじゃないか。」

平家 あわてて、「いやいや、活用できる局面もあるに違いないよ。泣くのはおやめ。」

男の子 「じゃ、僕を活用して見せてよ。」

平家 「・・・・・・・・」

男の子 「やっぱり、僕は役立たずなんだ。」激しく泣き出す。

平家 大慌てで、「考える、考えるから、泣かないで。」

ここで平家、夢から覚める。

ということで、考えたのがこれです。

     一部門、固定係数生産関数による日本経済の現状分析の試み

生産条件ですが、生産には労働だけが必要で、資本は不要とします。(これによってナイフエッジの問題は回避されます。)なお、この仮定は、rascalさんが「デービット・ローマー「上級マクロ経済学 (その1)」で引用されている稲田の条件、資本なくして生産なし、に反します。

1単位の財を作るのに必要な効率単位の労働量は一定とします。規模に対する経済も不経済も生じません。これはソローモデルと同じです。また労働の限界効率は一定で、逓減も逓増もしません。この点ではソローモデルと異なります。

需要は外生的に決まるものとします。ソローモデルでは、供給に見合う需要が発生しているとして、需要の制約により経済成長が抑制される事は無いとしていますが、このモデルでは供給に見合う需要が発生するとの仮定は置きません。

労働供給の条件は次のとおりです。

労働者は、実質賃金の如何にかかわらず労働を供給しようとすると仮定します。

0期の労働供給は、所与とします。

雇用されている労働者の死亡率をDE>0とします。

雇用されている労働者は結婚し、子供を作ります。生まれた子は次期に労働者となり、労働市場に登場します。出生率はBEとします。雇用されている労働者の出生率は死亡率よりも高とします。BE>DE>0。つまり雇用されている労働者の家計では人口は増加します。現在の日本とは少し違いますが、自然な仮定であると思います。こうしないと労働力人口が常に減少することになってしまいます。

雇用されている労働者は経験を積み、あるいは職場での訓練を受けることによって労働能力を引き上げていきます。次期の労働能力は1+Cとします。フォンノイマン型の生産関数では、資本設備と労働を投入して財と一期古くなった資本設備を生産すると考えますが、これに類似しています。労働を投入して財と経験をつんだ労働を生産すると考えているのです。ただし、資本設備は企業が所有しますが、経験をつんだ労働は企業の所有物ではありません。これを利用するには賃金を支払わなければなりません。あるいは予め長期の雇用契約を結んでおかなければなりません。

雇用されていない労働者の死亡率をDUとします。雇用されていない労働者は、十分な栄養、衛生環境、医療を得られないので、この死亡率は雇用されている労働者の死亡率よりも高くなります。したがって、DU>DE>0です。

さて、雇用されていない労働者の結婚と出産については、極端な仮定を起きます。このような労働者は、結婚できないか、できたとしても子供は作れないとします。あるいは生まれても生き延びられないものとします。このように極端にするのは簡単化のためです。

雇用されていない労働者の労働能力は向上しません。低下もしないものとします。

このようにこのモデルでは、労働供給が内生化されています。この点が労働力の供給を外生、かつ一定の率での増加としているソローモデルとの大きな違いです。何でも外生としてしまうソローモデルの限界を超えようとする一つの試みだと思っていただければ幸いです。

さて、このモデルでは労働需給の不一致が生じえます。このとき、通常の仮定に従って、現実の雇用量LEは労働需要LDと労働供給LSの小さいほうで決まるとします。これらは何れも効率労働単位で測ったものです。

これを式であらわしておきます。

t期の財市場の需要

D(t)=A(t)

t期の労働需要

 LD(t)=αA(t)

t期の効率労働単位で測った労働供給

 LS(t)=(1+C+BE―DE)LE(t-1)+(1-DU)(LS(t-1)-LE(t-1))

 uを失業率とすると、こう書き換えられます。

LS(t)=(1+C+BE―DE)(1-u)LS(t-1)+(1-DU)uLS(t-1)

t期の現実の雇用量

 LE(t)=mini(LS(t),LD(t))

t期の現実の生産量

 Y(t)=αLE(t)

次回は、このモデルの特性を調べます。

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