契約社員 その3

契約社員 その2」に引き続いて、厚生労働省の「平成17年有期契約労働に関する実態調査結果の概況」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/06/h0614-1.html)へのコメントです。

契約社員を雇用するには、雇用するなりの理由があります。事業所が挙げている理由の第一は、あたりまえのことですが「専門的な能力を有する人材を一定期間確保・活用するため」(41%)です。これとほぼ同じなのが「人件費の節約のため」(39%)です。この二つからかなり離れて、「正社員としての適正を見るため」(19%)と「能力、適性を見極めて雇用調整を行いやすいから」(19%)が続いています。

専門的な能力のある労働者にやってもらうべき仕事が、そういう労働者を継続して雇うほどの量、頻度ではないけれど、それでもあるという場合に、有期契約で「専門的な能力を有する人材を一定期間確保・活用する」というのは、契約社員の本来的な使い方です。問題はありません。そして、そのような場合、専門家をずっと雇用するのでは人件費が高すぎるが、期間を定めて雇用するのであれば、何とかなると言うことで、有期契約を結べば、「人件費の節約」になるでしょう。これも問題はありません。

一方で、「正社員としての適正を見るため」という目的があるのは、有期契約を試用期間の代わりに使っているのでしょうが、本来的な在り方といえるかどうか・・・。

ただ、これとは矛盾するような結果が、この調査で出ています。表9で示されている勤続年数です。本来的な使い方や、正社員としての適性の見極めであれば、それほど長い勤続にはならないはずです。長くて1年ではないでしょうか?ところが、実績は1年以内はわずか17%で、10年長が14.9%もあります。

また、表10で契約更新の理由を聞いているのですが、「本人の意思による」(68%)と並んで「労働者の勤務成績・勤務態度による」が65%あります。こうなると労働法制で想定されている有期契約本来のあり方とは違い、しかも、試用期間代わりですらなく、雇用調整を行いやすいと言う理由で雇用しているケースが多いのではないかと思えてきます。柔軟性の確保と言うことでしょう。実際、表14では、契約労働者の業務の恒常性が正社員と比較して「より恒常的である」(10%)、「同じである」(74%)という結果が示されており、一時的に発生した業務への対応のために契約社員を雇用しているのではなさそうです。

さらに、表12を見ると、業務の専門性が正社員と「同じである」が56%もあります。正社員の質が高いとも言えますが、果たしてどんなものでしょうか?

この柔軟性という面は、労働条件でも見られます。表11で契約更新の際の労働条件見直しの事例で、「勤務成績・勤務態度を考慮して労働条件を決定する」が52%となっています。

現在の契約社員の姿は、もし、将来、雇用保障を弱めるような形で法制改革が行われたとき、現在の比較的高度な業務を行っている正社員が置かれる立場を示唆するもののような気がします。

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