有期契約労働者の賃金 その2

この記事は、厚生労働省の「平成17年有期契約労働に関する実態調査結果の概況」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/06/h0614-1.html)へのコメントです。 今回は、「有期契約労働者の賃金 その1」で予告したとおり、同じ部署に正社員がいて、業務の専門性、業務に対する責任、業務の恒常性、すべてが同じだと考えている労働者の賃金に対する意識を見ます。 なお、「考えている」としたとは、この調査は有期労働者本人に聞いているからです。客観的に見て、あるいは経営者や、正社員から見てもそうであるかどうかは分かりません。自己認識と他人の目から見た自分が違うことはありえます。 表38で、正社員と比較してどうかということで、その意識を質問しているのですが、少し問題があります。有期契約労働者は、もちろん自分の賃金は知っています。しかし、正社員の賃金を知っているとは限りません。正社員と有期契約労働者が、給与明細を見せ合うということもあまりないでしょうから、大体の感覚です。また、「わからない」という選択肢があるのですが、これが正社員の給与を知った上で、同判断していいのか分からないのか、あるいは正社員の給与が分からないからなんともいえないのかよく分かりません。元正社員であった(したがって、正社員の賃金を知っている)「嘱託社員」では、この「わからない」という答えが少ないところを見ると、正社員の賃金が分からないという方が相当いるものと思われます。 そこで、やや乱暴というか、かなり乱暴なやり方ですが、「適当と思う」、「低いが納得できる」、「低く納得できない」を選んだ方を100として各々の割合を試算して見ました。結果はこうなりました。
正社員と専門性、責任、業務の恒常性が同じと考えている有期労働者の賃金についての意識
形態適当と思う低いが納得できる低く納得できない
総数40%27%32%
嘱託社員37%45%18%
短時間パート46%25%30%
その他47%22%31%
契約社員35%23%42%
その他パート33%23%45%
これを見ると、大体三つのグループに分けられるようです。 第一は「嘱託社員」で、賃金は低いが納得できるものの割合が高く、「低く納得できない」の割合は2割以下です。 第二は、「短時間のパートタイマー」と「その他」で、「適当と思う」が5割弱、「低いが納得できる」が2割強、「低く納得できない」が3割です。 第三は、「契約社員」と「その他のパートタイマー」で、「適当と思う」が3割台、「低いが納得できる」が2割強、「低く納得できない」が一番高く4割以上です。 嘱託社員は、元正社員ですから納得できます。なお、若年の女性を除き、高年齢者に限ると、もっと「低いが納得できる」の割合が高くなりそうな気がします。「短時間のパートタイマー」と「その他」は世間で言われているほどには不満が高くありません。家庭生活との両立などのメリットが評価されているのでしょうか?問題は「契約社員」と「その他のパートタイマー」です。所定内労働時間は、正社員とあまり代わりがないようですから、家庭生活との両立などのメリットはあまりないはずです。ここについては、労務管理という点でも問題がありそうです。 なお、同じ部署に正社員がいなかったり、業務に対する責任などが違うものも含めた全体に対して、同じ部署に正社員がいて、業務の専門性、業務に対する責任、業務の恒常性、すべてが同じだと考えている労働者であって、「低く納得できない」とするものの割合はこうなります。このような労働者の不満を解消したときの効果の目安です。
正社員と専門性、責任、業務の恒常性が同じと考えている有期労働者で、「低く納得できない」と答えたものの全体に対する割合
形態低く納得できないの割合
総数4%
嘱託社員5%
短時間パート2%
その他4%
契約社員8%
その他パート6%
ひとつ、気になるのが、正社員が有期契約労働者と比較して自分の賃金をどう思っているかです。相対的な賃金に対する意識ですから、両方から見てみたいのですが。 人気blogランキングでは「社会科学」の34位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング