ニートのミクロ経済学 その4

5 選好に基づき決定を行うことは、個人にとってなんら負担ではない。

6 個人は、選好に基づき速やかに決定を行う(行える)。

はセットで考えて見ます。(6は5の結果といえます。)どのような人間にも「現状」はあります。これを変えるためには決断が必要です。普通、経済学ではこのような決断は簡単に行えると考えてるようです。不確実性があればそれを考慮して決定を簡単に下すと考えているようです。

しかし、日常の買い物の際の決定と長く続ける仕事を選ぶという決断は重みが違います。重大な決断をするためには、それなりの心理的なコストがかかります。心理的なエネルギーを必要とするとも言えます。

就職先の決定は重大な決定の典型でしょう。何度も就職に失敗したり、ついた仕事(先)でうまくいかなかったりすると、心理的なコストが大きくなり、エネルギーが不足したりするのではないのでしょうか。もしそうなら、そういう若者は、「現状」維持を続けることになります。つまり、いったん無業やアルバイト生活をすると、無業をつづけたり、アルバイトからアルバイトへ渡り歩いたりするのです。

7 個人は自分の労働能力を知っている。

この条件が満たされないとき、無業、不安定就労を続けることになりがちであることは、説明の必要はないでしょう。

なお、このような若者は、合理的な計算の結果、求職活動をしないことにした「求職意欲喪失者」とは違います。

このような、ミクロ経済学の仮定が当てはまらない若者の抱える問題は、マクロ経済の好転、労働市場のタイト化だけでは解決できない可能性があります。そのためには、経済学の伝統的な思考の枠組みから見れば異様な心理学的、社会学的政策が必要な場合があります。

とはいえ、本当に人手不足になれば、企業はあの手この手で若者を採用しようとするでしょう。若者が迷っていても、決断できなくても、手を引いて、背中を押して職場に引き込んでしまう。企業にはそれくらいの能力はあるはずです。このような若者の問題を解決するにはミクロ施策しかないというわけでは決してありません。

ミクロ施策の必要性は認めます。しかし、マクロ施策なしにこの問題を解決できると考えるのは、幻想です。

次回からは、再び「実証派」に戻ります。

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