飲食店の変

男性フルタイム労働者について考えたい。男性フルタイム労働者が増えている産業がないわけではない。

その一つが「飲食店」である。

飲食店全体では、常用労働者数は302万人で、産業計の4,661万人の6~7%を占めており、無視できるものではない。しかし、この産業はパートタイム労働者の割合が80%を超えており、調査産業計の29%に比べて極めて高い。特に女性は91%とほとんどがパートタイム労働者である。男性も67%なのでおよそ3分の2である。つまり、フルタイム労働者は少ない。57万人しかいない。全産業の3,290万人の2%にも満たない。男性フルタイム労働者は、産業計の2,194万人中2%に満たない40万人しかいない。

したがって、フルタイム労働者、特に男性について検討するときは、飲食店のことはあまり気にしなくてもいいはずである。

ところが、2014年4月については、ちょっと事情が違う。男性フルタイム労働者が2万人増えているのである。男性フルタイム労働者全体は「減っている男性フルタイム労働者」で書いたように7万人減っているのであるから、男性フルタイム雇用を支えるうえで貢献度は大きい。ちなみに女性フルタイム労働者も3万人増えており、合計すると(四捨五入の関係があり)4万人増加している。

男性フルタイム労働者の増加率は4.2%、女性のそれはなんと18.5%である。標本誤差というのはあるにしても、相当な伸びとなっている可能性は極めて高い。

増加の理由を考えてみた。外食は消費税増税前の駆け込みの影響を受けにくい。食いだめはせいぜい2,3日のことだろう。一度行ってみたい高級店なら1年ぐらい続くかもしれないが。景気の回復の見通しが立って、消費者の財布のひもが緩むと消費が増えているのだろう。

普通なら、パートタイム労働者がもっと増えるはずだが、増やしにくい状況があると思われる。

パートタイム労働者の状況を25年4月と比較しよう。

25年4月は、パートタイム労働者の1時間当たり所定内給与は938.5円であった。2014年4月には960.8円に上がっている。2.4%の上昇である。(消費者物価は3%以上上がっているので、実質では減少している。)

パートタイムの常用労働者数は、238万人から246万人に3.3%増加している。しかし、総実労働時間が76.7時間から75.2時間に2%減少しているために、総労働投入は1.3%しか増えていない。

総労働投入の1時間当たり所定内給与弾力性はおよそ0.5である。名目で1%時給を上げても0.5%しか労働投入は増えない。パートタイム労働市場の逼迫がフルタイム労働への切り替えにつながっているのだと思われる。

企業としてはつらいかもしれないが、この産業の付加価値は増えていると思われる。資本と労働の分配は労働側に有利になっているだろうが。

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