雇用と賃金を考える(2014年1月・フルタイム労働者)

「雇用と賃金を考える(2014年1月・常用労働者)」で、フルタイム雇用が0.6%増加したと書きました。人数を計算すると17万3千人です。産業によって増加もあれば減少もあります。 増加した人数の大きな順に並べると次の通りです。 医療、福祉          10万4千人 その他のサービス業     6万人 教育、学習支援業      5万9千人 建設業             5万3千人 飲食サービス業等      4万5千人 いろいろな産業で増加しています。建設業を除き、第3次産業です。 公共投資の効果で建設業が増えていますが、その2倍以上の人数が医療、福祉で増えています。こちらも医療保険介護保険で支えられている割合が高い産業です。こちらは長期的に安定した需要の伸びが見込めます。国民の負担は増えるでしょうが、国民の切実なニーズも満たされます。報酬を適切に設定して、労働条件の向上を進めるべきでしょう。 次に減少した産業です。 製造業          11万7千人 生活関連サービス業   3万2千人  運輸業、郵便業      2万8千人 金融業、保険業      1万5千人 電気・ガス業        1万人 こちらは、多くの産業で減少しているのではなく、もっぱら製造業です。いつになったら増加に転じるのか、あるいはもう減少の一途をたどるのかと思います。必ずしも悲観的にならなくてもいい要素がいくつかあります。 まず、製造業全体でみた場合、常用労働者数は0.6%減っていますが、総実労働時間は4.1%増えており、労働投入量は3.5%増えていることです。製造業での労働需要が減っているわけではありません。次に、製造業の一般労働者だけを見ると、労働者数は1.6%減っていますが、総実労働時間は4.3%増加しており、労働投入量は2.7%増加しています。一般労働者の労働に対する需要が減っているようには見えません。また、所定外労働時間が17.2%と高い伸びを示しており、一般労働者がかなり忙しくなってきています。一般労働者の人数に余裕がなくなってきているのではないでしょうか?ちょっと先取りすることになりますが、製造業のパートタイム労働者が6万1千人、5.8%増えています。これも、製造業の労働需要の増加に、フルタイム労働者の残業や休日出勤とパートタイム労働者の増加で対応しているわけですが、どちらにも限界があるはずです。 製造業の製品に対する駆け込み需要があるのかもしれませんが、製造業の生産者在庫は減少しています。4月以降の落ち込みがあまり大きくなければ、製造業の労働に対する需要は大きくは減らないで済むかもしれません。そうなれば、労働市場のタイト化の結果として、製造業のフルタイム労働者が増加に転じる可能性もあります。他の産業でフルタイム労働者が大きく減っているところはないのですから、製造業でフルタイム労働者が減るのが止まれば、全産業でのフルタイム労働者数は、1%を超える率で伸びることになるでしょう。楽観的に過ぎるかもしれませんが、期待したいと思います。 さて、フルタイム雇用は0.6%の増加です。昨年の9月以降5か月連続しての増加です。 賃金は、所定内給与が0.1%の増加、所定外給与が5.4%の増加です。特別に支払われた給与が9.4%減ったため、現金給与総額は横ばいです。基調としては、良くも悪くもないとしか言えません。 労働者数が減り、現金給与総額が横ばいですので、フルタイム労働者全体の賃金収入はわずかな率ですが減少しています。物価も上がっていますので、実質では2%近い減少です。これが消費に響かなければいいのですが。 人気blogランキングでは「社会科学」の27位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング