「雇用と賃金を考える(2014年1月・常用労働者)

雇用と賃金を考える(2013年12月・常用労働者)」から一月たち2014年1月の毎月勤労統計の結果が出ました。 今回は、雇用からみていきます。%はすべて前年同期比です。 フルタイム雇用とパートタイム雇用を合わせた常用雇用は、21013年の8月まで1.0%未満の増加が続いていました。9月、10月と連続して+1.0%の増加、11月はさらに増加率が高まり1.2%の増加、12月も1.0%の増加でした。2014年1月は1.2%の増加です。これで5か月連続で1%を超えています。常用雇用は安定して増加しているといっていいでしょう。特に注目されるのが、フルタイム雇用の増加です。0.6%増加しています。2009年2月に0.9%の増加を記録して以来の高い増加率です。 季節調整前の常用雇用指数は102.5で、1月としては過去最高です。また、季節調整済みでは102.8で、2013年12月過去最高を更新した2013年12月と同水準です。 労働者数が100万人を超える産業を伸び率の高い順に並べると次のようになります。 飲食サービス業等  3.3% 医療福祉       3.0% 建設業         2.7% 教育学習支援業   2.3% その他のサービス業  2.3% 生活関連サービス業 2.2% 学術研究    1.5% 情報通信業  1.3% 卸売業・小売業  0.0% 金融・保険業   0.0% 運輸業。通信業  △0.3% 製造業         △0.6% 2013年11月、12月と同じく労働市場のタイト化は進行しているといっていいでしょう。したがって、名目賃金が上昇しやすい環境が整ってきているという判断にも変わりはありません。 常用労働者の賃金には微妙な変化が見られます。 現金給与総額は、2013年6月に+0.6%を記録して以来7月から10月まで連続して前年同月比マイナスでした。11月は+0.6%に転じ、12月も0.5%の増加でした。いい動きだと思っていたのですが1月は0.2%の減少に戻ってしまいました。 ところが、現金給与のうち決まって支給する給与は、2013年はずっとマイナスでしたが、1月には0.1%と小幅ですがプラスに転じました。決まって支給する給与のうち所定内給与は、0.2%の減少です。決まって支給する給与のうち所定外給与は、4.8%の増加です。生産の増加の効果で所定外給与は高い伸びが続いています。現金給与総額のうち特別に支給される給与は、1月は9.6%の減少です。ただし特別給与の額そのものは11,464円でそれほど大きな額ではありません。 所定外給与は好調が続いていますが、4月の消費税増税前の駆け込み生産、販売の影響があるかもしれません。所定内給与で基調を見ると、0.2%の減少は、いい数字とは言えません。さらに、現金給与総額も実質でみると、1.8%の減少です。この面でもいい数字とは言いえません。 1月が微妙なのは、事業所の規模間で差が出ていることです。 常用雇用は、5人以上では1.2%増加ですが、30人以上では0.3%増加です。つまり5人から29人が高い伸びを示しています。賃金は規模が大きいほど高いので、規模の小さな事業所で雇用が増加しているために賃金の伸びが低くなっている可能性があります。所定内給与は、5人以上では0.2%減少ですが、30人以上では0.2%増加です。規模の小さな事業所での賃金の低い労働者の新規採用が進んでいる可能性があります。 賃金と雇用を合わせて考えると、労働者の受け取っている所定内給与全体は名目で、-0.2%プラス1.2%で1%の増加です。2013年12月は0.5%の増加でしたので、拡大幅が大きくなっています。現金給与総額でも+1.0%で、これは好調といってもいいでしょう。 しかし、物価の上昇には追い付いていません。賃金を受け取る人数が増えたことの効果も、将来の見通しの改善の効果も考えなければなりませんが、マクロでみた勤労者の消費への所得面からの影響が気がかりです。 12月の一人あたりの総実労働時間は、2013年11月は1.1%減少でしたが、2013年12月に0.1%の増加に転じ、2014年1月も1.3%の増加です。雇用の伸び1.2%と合わせると、労働投入量は+2.5%の増加です。駆け込み需要の影響もあると思われますが、伸びが弱いわけではないとみています。 次回は、フルタイムの動きを検討する予定です。 (続く) 人気blogランキングでは「社会科学」の21位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング